第61話 わたしを想ってください
僕は、思い出す。クローバーの花言葉は・・・
「わたしを想ってください」・・・だったかな。
そんなふうに、思うと、かわいいセシルちゃんの心に
クローバーの花が宿っている、のも
なんとなく解る気がした。
「愛でてもらいたいんだよね。お花といっしょで」
僕は、そう思った。
セシルちゃんと一緒に、図書館のカウンターに居る人は・・・・。
なんとなく、かすみたち、花の世界のひとに似ているようだけど・・・・。
そうでもないみたい。
クリスタさん、と呼ばれていた。
ふんわり、ふわふわ。所在なげに揺れている。
お花のようだなぁと、僕は思う。
「なんのお花なんだろうな、あのひとは」
お店に戻ってみると、店長は「おかえりなさい」と、静かに微笑む。
店長は、かすみたちの世界のひとだから・・・・。でも、こちらにも見える。
クローバーさんは、セシルちゃんのそばにいるけれども・・・・僕にしか見えない。
いろいろ、あるんだなぁと思う。
店長に、尋ねてみた。
「聞いてもいいですか?」
店長は、静かに微笑みながら「なにかしら?」
艶やかな黒い髪を、後ろで素っ気無く束ねている。
それが、とても美しく見える。
僕は「見えるお花と、そうでないお花があります。」と
セシルちゃんと、クローバーさんのお話をしてみた。
店長は・・・・「そうね・・・わたしにも、よくわからないわ・・・・
心に、お花のような気持が宿っている。そういう事もあるかもしれないわね。
それが、あなたには見える。」
僕は、そうかもしれないな、と思う。
店長は「花でなくても・・・いろいろ、宿っているかもしれないわね。
音楽とか。イメージ、なのかしら」
あの、ルグランさんは・・・音楽が宿っているのかな。
そんな風にも思えてきた。
僕にも、なにか美しいものが宿っているといいなぁ、なんて思った。
風が、やわらかく吹きぬける。
お店は、きょうも静か。
でも不思議なことに、お店のお花は枯れもせず、しおれもしない。
ひょっとすると、このお店そのものも僕にしか見えていないのかな?
なんて思ったりもしたが。
そうではないようで。あのミシェル君も、僕の事を花屋のひとだと
知っているから。
parfum de fleur 深町珠 @shoofukamachi
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