ボーン・イン・ボーン3

ヴィジャヤは相手を骨のある相手、いままでの雑魚教団員が骨無しチキンだとするならば礼三郎は骨つき肉だという認識を3度目の拳を交えて更に改めた。奴はバッファローだ。食らうには倒して調理せねばならない。礼三郎のパワーはある程度の歯ごたえをヴィジャヤに期待させた。

『ヴィジャヤと言ったな』

  


『違う、ヴィジャヤは俺だけの名では無い。ヴィジャヤは俺たちの名前だ』

ヴィジャヤ自身この返答に驚いていた。俺はまだそんな風に思っていたのか。そしてなぜこの者にそう答えたのだ。

『おまえみたいのがたくさんいるのか?』

『もう、ヴィジャヤは俺だけだ。おそらく総ての世界で』

  


これは筋肉による対話である。拳と拳が交わる度に魂の接触回線がヴィジャヤと礼三郎に結ばれ、お互いの全存在を晒し合っているのだ。

『なるほど、おまえだったのか』

この五体に刻まれた中でも最も屈辱的敗北、しかしそれによって筋肉進化の袋小路が拓かれた闘いが想起される。この者の拳によって。

  



『俺は違う』

礼三郎はヴィジャヤに対しそう答える。サダヒコのようになるつもりは無いという意味だろうかサダヒコのようにヴィジャヤに勝つことはできないという意味だろうか。サダヒコにならずに勝つということだ。だがそれは今では、無い!

『ならばおまえの価値を証明せよ』

ヴィジャヤの拳が飛んだ!

  


エーデルワイスが弾き飛ばされる!固唾を飲んで見守るタイムスリップ教団員達は礼三郎が敗北したと感じ取った。違和感に最初に気づいたのはコツヒコだった。

『フォッシルリストレーション』

ゴルゴタの骸骨ボディにみずみずしい筋肉が精製されていく。

『調和!?なぜ!』

狼狽える一般団員達!

  


ゴルゴタの空気筋肉弾をエーデルワイスが吹き飛びながらもタイムスリップ回避する!これは!礼三郎はヴィジャヤとの筋肉密談で結託!二人の筋肉パワーを合わせるべく肉弾を買って出たのだ!同時にこれはヴィジャヤの同盟相手にふさわしい筋肉を持つのかのマッスル試練でもあったのだ!

  


空気中をマッスル遊泳するエーデルワイスは自らのパワーでヴィジャヤの投擲破壊力に耐えていた。これに自らのタイムスリップマッスルを加えてラウンズアームヘッド、ゴルゴタを貫く破壊のマッスルは二乗!ゴルゴタは筋肉に満ちた両手を盾のように合わせマッスル肉弾に備える。

『コツヒコ様!』

  


スカルヒコのフラガラッハがゴルゴタの前に仁王立ちし、マッスル肉弾に備える。だがマッスル肉弾はそれをいとも容易く突破、粉骨砕身!スカルヒコは粉微塵になった。なおも勢いは止まず、マッスル肉弾とゴルゴタは合間見えた。

『オッピョッポ!』

肉弾が叫んだ!

『コッコッコ!』

骨!

  


マッスル肉弾はゴルゴタを貫いた!みるみる萎む筋肉!

『コツヒコ様!』

生き残りの教団員が狼狽える。着地した肉弾は痛みに耐えて立ち上がった。エーデルワイスは未だ、自身が貫いたゴルゴタから目を離さない。ヴィジャヤもまた同様である。一般団員は動揺を続けている。

『ホネホネホネホネホネホネ』

  


『コツヒコ』

『私がなぜ調和を解いたか、わかるホネ?』

エーデルワイスはゴルゴタを貫いたがコクピットも賢者の石も無事である。『私の勝ちが確定したからだよ』ゴルゴタが右手をあげた。

『ターン・イン・マシーン、ゴッド・アンド・デス』

コツヒコがデーモンコードを唱えた。

『ホネホネ!?』

  


一般団員のフラガラッハが骨と化していく!骨パーツが浮く!

『ホネ!』

骨となりながらも驚く一般団員達!骨パーツがゴルゴタに集合していく!

『これはタイムスリップ・ボーン・ツリー!タイムスリップし骨が樹!』

さながらゴルゴタを中心に骨の樹が誕生していく。

『私なりに運命樹を模してみたホネ』

  



そしてボーンツリーに筋肉が満ちていく!それぞれの枝が終末代替邪神パスタの触手めいて弾力!

『スカルヒコは骨パーツとして生きる。おまえもだメタルヒコ』

『御意』

タイムスリップ・コツヒコチームが一体化し礼三郎とヴィジャヤを襲う!ボーンツリーヌードル触手がヴィジャヤに向かう!

  


『君たちも我が骨の世界へ来るが良いホネ』

取り込もうと言うのだ!フラガラッハの骨を吸収したゴルゴタは最早ヴィジャヤよりも大きい!

『ホネホネホネ』

最早、骨と化した教団員達がホネとしか言わず恐ろしい!

『やってみせろ』

ヴィジャヤは礼三郎を促す。

『オッピョッポ!』

礼三郎の拳が青く光る!

  


『ホネホネホネ』

だがそれはツリーヌードル触手の枝を砕くのみ!

『ヤツはもっと強かったぞ』

ヴィジャヤが続ける。ヴィジャヤにより、枝は砕かれていくが物量が多い。『サダヒコなら、どうする……』

『違う、おまえならどうするかだ』

ヴィジャヤは礼三郎に対し初めて声を発した。

『俺なら……』

  


決まっている。彼女の、世界を砕いたあの。

『アイ』

『ホネ?』

『ノー』

『僕もチカラを貸すよ』

『ユー』

ヴィジャヤも手刀を構えた。礼三郎、ヴィジャヤが骨の怨讐にかつての敵の技を放つ!

『コッコッコ!』

骨が、骨ツリーが砕け……。

  


『計算違いかのう』

ゴルゴタの残骸の上に立つ骨めいた老人は訝しむ。

『まあ良い。ゲルヒコくんにもそちらへ手を貸されたらたまったもんじゃ無いホネ』

コツヒコは陽気に言った。

『次はもっとうまくやるホネ』

『どこへいくつもりだ』

『教団を離れ自分を見つめ直すつもりホネ』

コツヒコは逃走する!

  


逃す気は無い!というヴィジャヤだったが意外な返答に戸惑い、一手遅れた!

『部下達の無念を晴らすため、更なる骨パワーアップするから、ボンザレスの逆襲を楽しみにするホネ!二人とも!』

ハムレットはタイムスリップ消失しながら捨て台詞を吐く!

『おい、待て……』

ヴィジャヤの攻撃は空をきった。

  


ヴィジャヤはしばらく自分の拳を見つめていたが礼三郎に向き直った。

『不完全燃焼だ。俺と戦え』ヴィジャヤが構えた。

『……望むところだ』

エーデルワイスもまた構えた。まだ世界は強敵ともに満ちている。『ヴィジャヤスだ』

『え?』

『俺の名前はヴィジャヤス、かかって来い礼三郎』

  


『ボーン・イン・ボーン』終わり

  


『ヒーロー・ファンタジー』に続く

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デイ・オブ・カタストロフ みぐだしょ @yosidagumi2000

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