最終話 これからだ!!

 「か、家族!?」


 「うん。あたし、ずっと家族と呼べる存在が欲しかった。円二はもちろん一番大事な家族。でも…鮎川先輩や原田先輩も、今じゃ大事な存在。そうでしょ?」


 どうやら、結愛は俺が思う以上に思い切った性格らしい。

 予想外の反応を見せ、外堀を埋めにかかる。


 なんてこった!


 「そ、それは、そうだが…結愛の気持ちは、どうなんだ?」


 「あたしは、いいよ。円二と同じぐらい、鮎川先輩と原田先輩が好きだから。円二はどう思うの?」


 「俺は…」


 俺は言葉に詰まった。


 ずっと俺のことを想い続けてくれた美也。

 かけがえのない友人として一緒にいてくれる千恵美。


 どちらもかけがえのない存在。


 凛に対する復讐劇を演じる中で、互いに対する想いはより深まった。


 今では結愛と同じく大切な存在。


 なのだが…


 「し、しかし…」


 「じゃあ、決まりだね!ここからは、円二の仕事だよ?」

 

 結愛はにっこりと微笑むと、美也と千恵美の方を向く。


 「鮎川先輩!原田先輩!円二が、大事な話があるそうですよ?」


 「お、おい!」


 「大事な話…?」


 「どんな話?ぼくもぜひ聞きたい!」


 ポニーテールが似合う長身のクラスメイト。

 ボーイッシュな短髪が印象的な中肉中背の幼馴染。


 そしてー、




 「さぁ、あとは円二の言葉だけだよ!」


 ちょっと背の低い、優しい微笑みを浮かべる義妹。


 俺はー、







 覚悟を決めた。

 

 「俺は…結愛が好きだ!!一番苦しい時にずっと一緒にいてくれて、支えてくれた!くりくりとした瞳も、柔らかい唇も、ツンデレだけど本当は優しい性格も、みんな愛おしいと思ってる、これからもずっと、一緒にいたいと思ってる!大好きだ!」


 大声で気持ちを伝える。


 「それと同じぐらい、美也も大好きだ!鈍感な俺にずっと寄り添ってくれて、直接関わりのない復讐にも協力してくれた!さらさらとしたポニーテールも、大きな胸も、全部気に入ってる!本当に大好きだ!」


 一人一人にちゃんと向き合って。


 「千恵美も…本当に大好きだ!凛の策略で酷い目にあっても、俺をずっと信じ続けてくれた!ボーイッシュだけど女の子として魅力的な所、ハスキーな声にいつもドキドキしている!最初の友達、いや、大切な人として、大好きだ!」


 それが、俺にできる精一杯のこと。




 「もし良かったら…俺と付き合ってくれ!!!みんなを一生、幸せにする!約束する!」


 言い切った後、俺は頭を下げた。


 誰も言葉を発さない。 

 ちょっと不安になる。


 さすがにやりすぎたか…?


 でもここまで来たら引き返せない。

 時が過ぎ去るのをじっと待っているとー、




 「…一生、あたしを幸せにしてくれるって、約束してくれる?」


 結愛の声が響いた。


 泣きそうになるのを必死にこらえているのか、鼻声になっている。


 「円二さん…その言葉、信じるよ?美也やみんなを、ずーーーっと幸せにしてくれるよね?約束だよ?」


 美也はすでに泣いているようだ。   

 目頭を抑えながら、喜びを隠しきれていない。


 「出会った時から、いつかこうなると思ってたんだ。これからもっと女の子っぽくなるから、期待しててね…?」


 千恵美は落ち着いている。

 

 まるで、こうなることを分かっていたかのように。

 それでも、涙を流している。




 「みんな…!」


 俺は、ゆっくり顔を上げる。




 「「「こちらこそ…よろしくお願いします!!!」」」


 丸山結愛。

 鮎川美也。

 原田千恵美。


 


 この瞬間から、俺たち4人は永遠の家族になる。




 数日後。


 何事もなく卒業式は終わりー、




 俺たちは、新たなる道を歩んでいった。


 

 ****



 月日は流れて2年後。

 平穏だった丸山家に新たなイベントが発生する。


 「ねー起きてよ円二さん!」


 「うーん…」


 「今日は結愛ちゃんの卒業式でしょ!大学生だからって10時まで寝てると遅れるよ!」


 「はっ!そうだった!」


 俺は美也の声で目を覚ます。


 今日は愛する義妹の卒業式。

 遅刻すると大変なことにー、




 「って、なんで裸なんだ美也!?」


 「もう、忘れたの?昨日はあれだけ激しく求めたのにぃ…」


 隣にいる同棲相手、鮎川美也はにひひと笑った。

 高校卒業と同時に専門学校生となり、俺の家で同居している。


 この2年で腰はさらにくびれ、大人の顔つきになり、胸はFカップほどになった。


 そしてー、


 その胸を、こちらにぎゅっ…と押し付ける。


 「なんなら…もう1回する?まだ、胸がじんじんするんだぁ…卒業式で思い出したら、濡れちゃいそう…」


 「ま、待て!結愛の卒業式に遅れたら、3人全員叱られるぞ!」


 「大丈夫だよ、すぐ、終わらせるから…えへへ」


 「胸元を開くんじゃなああああああい!」


 ぷるん、と揺れる美也の胸の圧力になんとか対抗していると、反対側から別の人物が姿を表す。


 「どうしたの2人とも…ぼく、朝は弱いんだ…」


 3人目の同棲相手、原田千恵美だ。


 卒業後は看護学校の学生となり、美也と同じく俺の家で同棲している。

 

 慎ましかった胸は少し大きくなり、ボーイッシュな面影を残しつつもスレンダーな美少女へと成長した。


 それはいいのだが…




 「ねぇ…円二くん。ちゅーしよ、ちゅー」


 「言うと思った!」


 「昨日も円二くんとちゅーしてて思ったんだぁ。きっと、ぼくはこのために生まれてきたんだって…だから、ね?」


 朝は寝ぼけたままキス魔と化す。


 長い舌をぺろりと伸ばし、俺の唇にそっと顔を寄せた。

 熱を帯びた吐息を吹きかけられ、思わず動きを止めてしまう。


 「ちゅー…しよ?」


 便乗して美也も胸を寄せてくる。


 「美也の胸…慰めて…?」




 「だ、誰か助けてええええええええええええっ…!」


 と言いつつも、彼女らの欲望を満たす俺であった。



****



 「やっべー!!!遅刻遅刻!」


 数十分後。


 化粧などの準備で遅れる美也と千恵美より先に家を出る。

 

 

 一応、俺の今を少しだけ語ろうか。


 俺は1年の浪人生活を経て、とある私立大学に入学した。 

 最初は歳が1つ違うということで気まずさもあったが、今ではなんとかやっていけそうだ。


 ーすごいよ円二!いよいよ明智流護身術初段だね!やっぱり僕の代わりに明智流護身術を…

 ーそれは断る!

 

 無事東大に合格した明智ともたまに会っている。

 なんとなく体を鍛えるために護身術を継続しているが、跡を継ぐのは遠慮しておきたい。


 ー刑務所でのお勤めは辛いですが、円二君の言う通り毎日オナニーを我慢して励んでいます…


 凛からは、1月に1度手紙がくるようになった。

 まじめに懺悔、反省、お勤めをこなしているらしい。


 仲良くするつもりはないが、こいつがこれ以上悪さをしないよう、監視は必須だ。


 出所するのは、5年後の予定。

 

 

 その時は…一度だけ会ってやるとするか。


 





 「なーにぼーっとしてんの、円二」


 気がつくと、お目当ての人物が目の前に立っている。


 学校の校門の前に立つ、丸山結愛。

 今日無事高校を卒業し、俺と同じ大学に行くことになった。


 2年の歳月を経て、随分と大人びている。

 美少女ではなく、美人と言っていい。


 すらりと長いロングヘアが風に靡き、太陽の光に照らされ、美しく輝いていた。


 「いや、綺麗だな…と思ってさ」


 「ふふふ…いつも見てるのに不思議なこと言うのね。昨日だって、あたしの恥ずかしいところ、全部見たのに…」


 「そ、それはだな…」


 「おーーーい!円二さん!結愛ちゃーーーん!」


 「円二君!遅れてごめーん!」


 どうやら美也や千恵美も後から追いついてきたようだ。


 「じゃあ、行こっか」


 「ああ。卒業おめでとう、結愛」


 「ありがとう。でも、その前に…」


 「?」




 結愛は俺の唇に、自分の唇をそっと添える。

 ちょっと驚いてしまって声が出ない。


 代わりに、結愛の唇を受け入れ、短い時間ながら熱いキスを交わした。


 幸せな時間。

 

 

 こんな日々が、ずっと続いてほしいものだ。


 「…これからもずっと、ずっと一緒だよ?」


 誓いのキスを終え、俺たちは歩み出す。


 「…ああ。約束する。みんなと、ずーっと一緒だ」


 結愛と手を繋ぎ、美也と千恵美の元へと向かいはじめた。


 これからも、人生で大変なことは幾度も起こるだろう。

 それでもー、







 「「みんなの戦いは、これからだ!!!」」


 みんなとなら、乗り越えていける。



  ****



  ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!

  イラスト企画やおまけシナリオも計画中なので、詳細が分かり次第発表いたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染に浮気され、義妹とセフレになる 2023年中に小説家となるスンダヴ @sundav0210

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ