第83話 それは…

 「浮気もの〜〜〜〜!!!結愛ちゃんと言う人がいながら〜〜〜!!」


 「ま、待て!誤解だ!」


 先ほどまで穏やかだった美也がプリプリと怒りはじめた。

 目を怒らせ、髪は逆立ち、口を尖らせている。

 なかなかの迫力だ。

 

 これは…困った。


 ちゃんと説明すれば誤解が解けるのだろうが、『美也と同じく、千恵美とも一回限りのキスをしただけで付き合ってはいない。2人の思いに報いたかっただけで他意はない』とあけすけに説明するのも、なんだか怒られる気がする。


 これじゃ俺がただの浮気男みたいじゃないか!

 凛と同じ恥知らずで破廉恥な人間ということになってしまう!!


 いや、もうなってるかも!?


 「何が誤解よ!美也とは1度きりのキスだけど…原田さんとは違うんでしょ!?きっとあんなことやこんなことも…!」


 混乱する俺をよそに、誤解した美也は怒り続ける。

  

 それを眺める千恵美は困り顔だ。


 「ど、どうしたのさ原田さん。ぼくはただ円二くんと交わしたキスと永遠の約束の話を…」


 「ほら!永遠の約束なんてしちゃってるし!!原田さんもダメだよ〜〜〜!!結愛ちゃんに配慮しなくちゃ!」


 「いやだなぁ。もちろん、結愛ちゃんにも内緒だよ?てへっ!」


 「ぐぬぬぬぬぬぬぬ…原田さんのことは好きだけど…友人が道を踏み外すなら、止めなくちゃ!」


 「ふっ。良くわからないけど、ぼくと勝負しようというのかい?いいだろう、スポーツで勝負だ!」


 「じゃ、じゃあバレーボールで!美也が勝ったら、円二さんとの爛れた関係を精算すること!」


 「負けられない戦いだね…こっちが勝ったら、何を勘違いしてるか洗いざらい話してもらうよ!いざ!」


 睨み合う美少女2人。


 いつはじまっても不思議じゃない、互いの名誉をかけた戦い。




 「ストーーーップ!分かった!ちゃんと話すから…俺のために争わないでえええええええっ!!」


 はじまる直前で俺は2人の間に割って入り、勝負を止めた。



 ****



 「み、美也の早とちりだったか〜〜〜!」


 数分後。

 全ての真実を悟った美也は膝から崩れ落ちた。


 なんとか説明に成功したらしい。


 「ごほん。分かってくれたらいいんだ。千恵美ともの永遠の誓いは、一生友人同士でいること。その…付き合うというわけではない。そうだよな千恵美」


 「もちろんさ!結愛ちゃんと円二くんは真実の愛を結んだ関係!そこに無理やり入ろうというつもりはないよ!」


 千恵美は優雅にステップを踏みながら踊る。


 が、やがて動きを止め、俺をじっ…と見つめー、



 

 「でも、美也さんともキスをしたなんて聞いてなかったなぁ。美也さんが誤解しても無理はないかも?」


 軽く俺を糾弾した。


 「…ぎくり」


 「いやぁ。確かにぼくに話す必要はないけどねぇ。結愛ちゃんと、ぼくと、鮎川さんの心を虜にして、キスまでしちゃうなんて、円二くんは幸せ者だねえ」


 「ぎくぎくぎく!」


 「…ぼくたちは、1人の男の子しか好きになれないんだけどなー…」 

 

 「ぐはぁあああああっ!」


 流石に旧友は鋭い。

 俺の気にしているところを的確に突いた。


 やはり…俺は凛と同じレベルなのか!?


 そんな馬鹿なあぁぁぁあああああっ!


 「ごめんね原田さ〜〜〜〜ん!さっきは酷いこと言って〜〜〜〜!!」


 美也が千恵美に飛びつき、涙を流しながら謝罪する。


 「いいんだ。分かってくれたら。原田さんも、ちょっとびっくりしちゃったんだね」


 「ひっぐ…うん…」


 ボーイッシュで美形な千恵美が、美也の頭を優しくなでなでするところは、まるで宝塚歌劇のミュージカルのようだ。


 「原田さぁん…私たち一生負けヒロインとして生きていこうね!おばあちゃんたちになっても、円二くんを引きずったまま生きていこうね〜〜〜!!!」


 「分かってるさ…ぼくも負けヒロインの端くれ。円二くんの友人であってもそれは変わらない。ずっと…ずっと一緒だよ…!!」


 「うん…うん!!」


 2人の間には俺には入り込めない世界が出来上がり、急速に広がっていく。


 俺は…




 俺はどうすればいいんだ!  


 みんなを救うには…どうすればいいんだ!?




 「…みなさん、何してるんですか?卒業式の練習がそろそろ再開しますよ」


 その時ー、




 結愛が屋上にやって来た。


 「ゆ、結愛!?」


 「んー…なんだか円二の様子がおかしい。まさか、鮎川先輩と原田先輩に迷惑を…がるるるる」


 「違うんだ義妹よ。これには深いワケがあってだな…」


 「「負けヒロインはずっ友だよ!!」」


 抱き合う美也と千恵美をよそに、俺は事情を話し始めた。



 ****



 「なるほど…大体の事情は分かりました。円二も2人を傷つけたいと思ってやったことではありません…ですが、責任はあるかもしれません。あたし含む3人の女の子にキスをした責任を…」


 事情を知り、結愛は中立的な立場をとる。


 「お、俺はどうすればいいんだ!結愛!」


 そんな妹にすがるような目線を送る俺。


 というか、思い切りすがってます。


 「…1つだけ、方法があるかも」


 「なんだそれは!教えてくれ!」


 「それは…」




 結愛はにっこりと笑う。


 「みんなで、家族になること!」



 ****



  相変わらず癖の強い作品ですが、もし気に入れば応援や☆、フォローを頂けると嬉しいです!遅ればせながら第7回カクヨムWeb小説コンテストにも応募いたします。


 新たに「☆1000で電子書籍化」という目標を掲げることにしました!今後もコンスタントに更新しますので、よろしくお願いします!

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