うさぎと暮らす2 うさぎは鳴かない

うさぎは鳴かない。

基本的に声でコミュニケーションをとることがないから、らしい。


なので、犬や猫や鳥など鳴き声を発する動物と暮らすより、はるかに静かだ。


ただ声は出さないが、様々な音をたてる。


身体の割に力強く発達した後ろ脚で地面を踏み鳴らす「脚ダン」や、ケージの網を齧ってゆさぶるガシャガシャという音は耳につきやすい。


他にも特徴的なのは、牧草を食べるポリポリという乾いた音や、ウンチがスノコから床に落ちるポトッポトッという音。


実はうさぎは、寝てる時以外の大半の時間を牧草を食べるかウンチをする時間に費やしていると言っても過言では無い。


もちろん、それにはきちんと理由がある。


完全草食動物のうさぎは、当然そのエネルギー源は草だ。いわゆるラビットフードというペレット状の餌は補助的な役割で、メインはチモシーなどイネ科の牧草が昨今の主流となっている。

人間ではいくら牧草を食べてもそこからタンパク質やビタミンなど必要な栄養素は獲得し切れないが、うさぎはそれができる消化機能をもっている。


それはとても凄いことのように感じるが、しかしエネルギー効率は非常に悪い。


なので延々とたくさん食べなければならない。


そしてその性質故か、食物繊維が胃腸に無いとそもそも胃腸が動かない。ヒトも犬も猫も、食べ物が入っていなくとも胃腸は動くが、うさぎは食べ物が入ってはじめて胃腸が動く。


胃腸が動かないと何がいけないのかって、食物繊維を分解する微生物が出すガスが胃に充満して腹痛で体調が悪くなってしまうのだ。

しかもこの腹痛、ときには半日でうさぎの命を奪うこともある超危険な腹痛なのだ。


うさぎの飼い主が最も恐れていることは?というアンケートをとれば、突然の腹痛・食欲不振という答えが1位になるかもしれない。


それくらい、うさぎが「食べない」という状態は怖いのだ。


なので元気な状態のうさぎは、とにかくずっとポリポリと牧草を食べている。そしてポトリポトリと、まるく可愛らしいウンチを落とす。


耳を澄ますとかすかに聞こえて来るその音は、うさぎが元気にしている証拠。


嬉しい音なのだ。

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虹色すずり うさのすずり @usano_suzuri

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