第2話 約束が変えたもの

華蓮かれんはどんな気持ちだった?この四年間。俺は、友達で居られたかな」


 どこか、ぼんやりとした大地だいち君の問いかけ。

 この四年間、か。本当に色々なことがあった。


「最初に言うね。私は……いつの間にか、大地君の事、友達以上に見てた」


 それはいつの頃からだっただろうか。

 中学一年の時に、「毎月遊んでいる、小学校の友達」の話をしてからだろうか。

 あの時は、「華蓮ちゃんは、その男の子が好きなの?」って聞かれたっけ。


「俺も、いつの間にか、華蓮の事を、単なる友達って思えなくなった」


 少し照れくさそうな大地君の声。そうじゃないかと思った。

 だって、お互いのところに毎月通い続ける友達なんて、普通は居ない。

 だから、私達が、男女としての好意を持つのは必然だったのかもしれない。


「友達以上だと、たとえば、どんな事を考えたりした?」


 先に聞くのは卑怯かもと思う。

 でも、好きな男の子がどんな事を考えているのか知っておきたかった。


「そ、その。手を繋いだりとか」

「わ、私も手、繋ぎたいな。いい?」

「あ、ああ。いいけど」


 隣に座る大地君の手をそっと握る。

 手の暖かさが伝わって来て、どこかほっとする。


「手、暖かいね」

「そうか?華蓮の手は、ちょっと冷たいな」

「そうかな?」


 イマイチ、自分だとピンと来ない。


「他には?その……男の子向けの本だと、色々書いてあるけど」


 年頃の女性としては、そういう事にも興味が出てくる。

 だから、大地君と同じ年頃の子はどういうことをしたいんだろう……と。


「ちょっと……抱きしめてみたい」


 そう言われて、恥ずかしくて、でも、嬉しくなる。


「うん。いいよ」

「そ、それじゃ……」


 横から抱き寄せられる。


「なんだろう。不思議。安心するの」

「俺も。なんか、安心するよな」


 そして、安心するだけじゃなくて、幸せな気持ちにもなる。


「他には、何かある?」

「これ以上言うのは恥ずかしいんだけど」

「胸……とか触れてみたくならない?」


 なんで、私は、こんな大胆なことを言っているんだろう。


「そ、そういうのは、もっと関係が進んでからだろ」

「そ、そうだね。ごめん」


 そもそも、今の私達の関係はなんだろう。

 友達以上なことは確認した。じゃあ……


「私達って、恋人に、なれるかな」


 言ってて、顔がかあっと熱くなるのを感じる。

 

「俺は、なりたい、な」

「そっか、ありがと。大地君。私も、恋人になりたい」


 これで、私達は、恋人同士、なのかな?


「でも、変な話だよな。友達でいるために、月一回って話したのに」

「そうかも。ね。友達で居続けたいだけだったのに」


 いつの間に、もっと、もっと、一緒に居たいという気持ちになったんだろう。


「そういえば。華蓮が俺の家に泊まりに……って今日もだけど、は嬉しいぞ」

「うん。私も。お泊りする時は、ちょっと、ドキドキしてた」


 毎回、毎回、ひょとしたら、関係が進展するんじゃないか。

 そんな事を考えていた私。


「でも、そのために、友達との時間とか、色々、悪いな」

「ううん。それは、大地君の方も同じでしょ?」


 お互いに月一回、つまり、月二回はお互いのところを行き来していた計算になる。

 その分、友達との付き合いが薄くなった部分はある。後悔はしてないけど。


「だな。それで……華蓮の方は、やってみたいこと、ないのか?恋人になったら」

 

 その時、真っ先に浮かんだ事は、あまりにもいきなりに思えることで。

 少し、言うのを躊躇してしまいそうになる。


「え、ええと。いきなり、とか思わないでね?」

「華蓮、結構むっつりだよな。なんか、想像つくんだけど」


 大地君が何を考えているのか知らないけど、卑猥なことじゃないはず。


「キス……はしてみたい」

「そういうところじゃないかと思った」


 むむ。大地君は予想していたんだろうか。


「嫌?キスするの」

「嫌じゃないけど……緊張する」


 緊張。拒否されたわけじゃないんだ。良かった。

 でも、私の方にもなんだか、緊張が伝わってくる。


「ええと……俺の方からするか?」

「ううん。私から言ったんだし。させて欲しい」


 既に抱き合っていて、身体はくっついている。

 だから、もう少し顔をくっつけて、目を閉じて、唇を合わせるだけ。

 だというのに、なかなか身体が動かない。


「……っくっく」

「大地君。何、笑ってるの?」

「いや、華蓮が緊張しまくってるのが、おかしくて」

「だって、初めてだし」

「じゃ、じゃあ。俺から、するな」

「は、はい。よろしく……お願いします」


 目を瞑って、顔を近づけて、その時を待つ。

 チュ、と唇に少し湿った感触。


「これが、キス、なんだね……」

「ああ、めちゃくちゃ緊張した」


 なんだか、胸の中がとっても暖かくなってくる気がする。


 しばらく、お互い、黙ったまま、夜風に当たっていた。

 とても幸せで、気持ちがいい。


「そろそろ、うちに行くか」

「うん。でも、恋人になって初めてのお泊り……」

「なんか変な想像してるか?」

「してない!」

「だったらいいんだけど」


 こうして、私達は、友達以上で、でもよくわからない距離から。

 恋人以上の、やっぱりよくわからない何かになったのだった。

 

 願わくば、こんな幸せな日々が続きますように。



☆☆☆☆あとがき☆☆☆


というわけで、「約束」を守り続けた二人の話なのでした。

四年間のあれこれとかは、徹底して削って、二人の空気とか雰囲気重視なお話です。

うまく、夜の公園での対話という感じが伝わって入ればいいのですが。



何か感じ入るものがあれば、応援コメントなどいただけると

作者が喜びます。それでは。


☆☆☆☆

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お淑やかな幼馴染と守り続けた約束 久野真一 @kuno1234

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