第6話例えばそんな話

開いてみなければ中がどうなっているのかわからない猫箱。


ここでいくつか仮定をあげようではないか。それを踏まえた上で、最後の問いに答えて欲しい。


まずは猫箱、もとい猿箱の状態である。

例えば、部屋のどこかが開いていたとか。

サルが実は賢くて、睡眠薬を飲んでいなかったとか。

この二つの場合、密室は成り立たなくなり、サルは既に外へ出て行ってしまった可能性もある。


次に沙流というサルについてである。

例えば、沙流が天の邪鬼でいじめていただけとか。

殺人、指名手配の情報が間違っていたとか。


実は沙流が


女性であった、


とか。


これらの場合、木下は沙流を猿箱の中に入れただろうか。

沙流が木下に対して向けていた想いが「好意」であったのならば。木下は沙流をこの猿箱の中に入れただろうか。


全ては仮定の話である。

しかし、この箱の中を開いてみない限り、もしくはこの沙流という人間を開いてみない限り、どうなっているのかわからないのである。

それが「シュレーディンガーの箱」というものである。


そして、もう1つだけ仮定を箱の中に入れておこう。

それは、箱の中のサルがもともと


死んで


いた


場合



木下の元に訪れた「沙流」は一体誰であったのか。訪れた者が数年会っていない「沙流」であるという確信はあったのか。

この仮定を箱に入れると、中に入れた「サル」は消えていなくなる。

生きている、死んでいるの他に、いないという答えが発生するのである。


あくまで仮定であり、可能性の話だ。




さて、最後になるが、ここに1つの質問をさせていただきたい。

あなたの考えを聞かせてもらいたい。


木下は人殺しか、否か。




扉の前に立つあなたよ。どうか開いて見てご覧いただきたい。

扉の向こうは、どうなっているだろうか。


後ろに気配を感じたら注意するといい。

逃げ出したサルが凶器を振りかぶっているかもしれない。

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シュレーディンガーの猿 犬屋小烏本部 @inuya

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