はじめての川柳 —— 川柳の里

       乱れ雲床屋は空を傾ける   友未


「はじめての川柳 —— 川柳の里」https://kakuyomu.jp/user_events/16818093082992269185?order=published_at#enteredWorks

及び

https://kakuyomu.jp/user_events/16818093083575048846?order=published_at#enteredWorks

へのご参加、有難うございました。今回はパート1,パート2合せて友未自身の投句を除き、6名様、8作品のご寄稿を頂きました。俳句や短歌をはずした川柳のみの企画でしたので、下手をすると参加者ゼロもあり得るかもしれないと危ぶんでおりましたが、おかげさまで数十句の愉しい作品をお寄せ頂けましたこと、改めてお礼申し上げます。

 隠れ川柳ファンは、実はカクヨム内にも結構いらっしゃいます。関心のある方は一度「川柳」で検索をかけてみて下さい。口惜しいかな友未の企画自体はまだ盛況にはほど遠い状態ですが、垣間見させて頂くところ、カクヨム川柳作家の皆様の多くは外部の様々なコンテストへの投稿を創作の励みにされているのかと思われます。一方、俳句初心者諸氏の中にもご自身ではそれと気付かないまま面白い川柳を書かれている場合があったり、初心者でない俳句作家の方々でも、自分の書いたものが俳句なのか川柳なのか分らないというようなケースも珍しくないようです。実際、一口に川柳といっても、生活川柳もあれば時事川柳もあり、言葉遊びもあれば形而上川柳もあり、笑いがあるものもないものも、人間を詠むものも風物を詠むものもあると、実に千差万別、多種多様ですので、結局、五七五で詠んでみて別にどちらであっても構わないという自然体で良いのではないかと思います。ただ、ひとつの考え方として、友未個人は、俳句や短歌は詠ずるもの、川柳や狂歌は穿つものという見方をしています。たとえば、悲しい時、俳句や短歌では作者自身がその悲しみに敢えて身を委ねて感情を投げ出すことができますが、川柳や狂歌では悲しんでいる自分を一旦俯瞰して景色化しないとはじまらないのではないかという気がします。川柳特有の可笑しみや意表をつく驚きも多分そうした自己客体化(これは言葉遣い自体の客観性とはまた異なる問題ですが)のなせる所なのかもしれません。ですから俳句や短歌では作者が自分の死を笑うのは困難ですが、川柳はそれが得意なのでしょう。その意味でより醒めた文学だと言えるかもしれません。ですが友未のように、耽美性や季節感のない現代俳句はみな川柳だ、などと考えるのは行き過ぎですので見習ってはいけません。


 さて、今回の企画は「はじめての川柳」と銘打たせていただいたように、川柳というジャンルにとにかく目を向けて頂きたいという思いを最優先にしたものでした。そこでストックブックでも、今回に限り、「友未が個人的にひかれた作品を紹介する」という従来のスタンスを一度離れて、川柳ってこんなに身近で愉しいものなんだ、こんなのも、あんなのも川柳なんだと一人でも多くの方々に感じて頂けるように、全参加者さまの句を三句ずつご紹介してまいりたいと思います。のみならず、ご参加頂いた作品以外からも、別の機会に知ることのあった二名のカクヨム作家さまの句も合せて三句ずつご紹介させて頂ければと思います。


∮ それではまず最初に、以前、友未の自主企画「うたぼっちの里」にご寄稿頂いていた 知良うらら 様の 【チラシの裏に五七五(たまに 七七)2024】(略してチラ裏!?) https://kakuyomu.jp/works/16817330669430890160 から ——


   赤べこよ 君は頼れる イエスマン


   冬田面ふゆたのも からす 案山子かかしに 驚けり


   漬かる前 なぜか梅酒減る 小人かな?


チラ裏は文字通り日々の出来事や雑感をチラシの裏にメモして行くような気取りのない内容で、川柳だけでなく、俳句や短歌や狂歌も歌われています。冒頭に置かれた句や歌にエッセイ風の愉しい小文が添えられており、日々、更新中です。


∮ 来冬 邦子 さまの 【俳句スイッチ・エピソード零】https://kakuyomu.jp/works/1177354054887373753 は基本、川柳ではなく俳句集ですが、時々、愉し過ぎる句に遭遇します。


   蟷螂やバス待つ列の四番目


 朝のバス停で列に並んだら、三番目と四番目の間が、妙に間隔を開けすぎているように見えるので、斜めから覗いてみたら、そこに大きめのカマキリがいて、ヒエ~って叫びそうになったよという句です。ボツだった。(来冬さま原文)


   名月や良人おっと目を剥く離縁状


こちらは川柳というより、事故俳句 ⁈


   赤い羽根付けて与野党審議入り


読者によって様々な読み方ができそうです。立派な俳句川柳です。


∮ 次に今回の参加作品から。ご寄稿順に、まず結音(Yuine)さまの【かくよむ川柳】 https://kakuyomu.jp/works/16818093082917771898 全三句。


   「押し間違い」 まちがえた その投稿は 明日あすぶん


予約投稿するつもりが、「今すぐ公開」押してしまった……

そんなことって、ない?(結音さま原文)


   「書き込み」  やりすぎか?!

          毎エピソードに

          コメカキコ


   「自主企画」  自主企画  

          参加したくて

          筆を執る


いずれもカクヨム作家さまなら一度や二度は必ず経験するようなミスや思いばかりです。最初の「押し間違い」には60以上のハートと14件以上の応援コメントが寄せられ「あるある」「あるある」と大賑わい!これぞ川柳ならではの愉しさです。「自主企画」—— 友未もそう思ってもらえるような企画にしたいです。


∮ 平中なごん様といえば、ホラーもののスペシャリスト。以前にも詩歌企画の折には、「怪句」をご披露下さっていましたが、今回も期待通り【妖怪句二十連】https://kakuyomu.jp/works/16817330658274883896 でのご参加です。


   鬼となり 娘のために 肝をとり


   いつの間に 知らぬジジイが 居間におり


   我が姿 写さば疫病 退散す


といった具合に二十の妖怪が紹介がされていて、さてあなたには幾つお分りですか、という趣向です。もちろん答もちゃんと用意されていて、上から「鬼婆」「送り犬(送り狼)」「アマビエ(アマビコ)」です。応援コメントで、朝吹さまが「妖怪かるたみたい」だとおっしゃっていましたが、本当に、是非カルタにして頂きたくなりました。


∮ 森緒 源 さまからはこれまでにもたくさんの可笑しな、笑える短篇をご寄稿いただいており、詩歌でも「風流川柳只自己流‼️」という愉しい句集もお寄せ頂いておりましたが、今回はその続編ともいうべき【風流川柳只自己流‼️2】https://kakuyomu.jp/works/16818093081863705701 なる新作です。


   蓮舫よ

   2位ダメ3位は

   もっとダメ   ( 第1話 東京都知事選が終わって… より)


   競技者が    

   武道家制し

   仏が金     ( 第4話 ドラマチックPARIS五輪!② より)


   団体の

   畳の無念

   剣で討つ    ( 第5話 ドラマチックPARIS五輪!③ より)


選挙やオリンピック、災害など身近な話題に幅広く取材したスタンスは前作同様で、親しみやすさの中にもちょっぴり風刺のスパイスが利いていました。


∮ 高知の楽しい野球狸のお噺や、強烈な主張に貫かれた「こしおれたんか」で異色の存在感を放つ野栗さま。【五七五 関東大震災から百一年】https://kakuyomu.jp/works/16818093083092911542 は震災デマで虐殺された朝鮮人と事件の風化への怒りの鎮魂句です。


   きっとある 「おれがやった」という証言はなし


   「無縁」ではない 埋められた 故郷くにも名も


   白むくげ ひとつ落ちては ひとつ咲く


百一年まえの事件ですが、似たような小さなデマやヘイトが最近国内でも繰り返されはじめてきたような気がして不安です。句は鳳仙花に始まり、手向けのむくげに終ります。


∮ 蒼河颯人 さまの【落花流水の調べ】https://kakuyomu.jp/works/16817330653582008824 。前半、恋愛句が並んでいてちょっと困ってしまったのですが(友未は実は恋愛系が無茶苦茶苦手です!)、後半、他のテーマに移って下さって本当に助かりました。


   君の手で はらりと解けし 我が心


誰か友未の心もはらりと解いて欲しいです。


   明日やる 今度で良いや 先延ばし


これ頂き。モラトリアム万歳!


   炎天下 ちょいと買い出し 命がけ


本当に。夏眠してしまいたい。


 次に、同企画パート2を、やはりご寄稿の順に。


∮ パート1に引き続きご参加いただきました平中なごん様。今回はじめて怪談以外の作品を拝読できました。何と【フラペチーノで一句】。https://kakuyomu.jp/works/16818093078617401215 「スタバのフラペチーノがけっこう好きで、新作出るとついつい飲んでしまうのですが、じつはその度に一句詠んでいたりします……。」(平中さま、紹介文)とおっしゃる通り、20句すべてが各種フラペチーノ讃歌です!


   ブリュレした そんなバナナな フラペチーノ


   過熱する 世界へ届け ラブ・アンド・ピーチ


   青と黄 南洋の色 パイナツプル


 フラペチーノ・ファン、スタバ・ファン必読の書です。


∮ 滝口アルファさまのふたつの句集は、今回のご参加作品中、抜群に読み応えのある文学性薫る内容でした。個人的に、こういう芸術川柳には敬意を表さずにはいられません。まずは【銀の風 川柳連作10句】https://kakuyomu.jp/works/16818093076042167300 から3句。


   向日葵は


   まるで静かな


   躁である


「向日葵」は季語にもなれますから、俳句ともとれそうです。


   団子虫


   何かカミング


   アウトせよ


丸まった団子虫と「カミングアウト」の妙。


   月下美人


   ばかり放火


   する老婆


ちょっと不気味で、意表を衝くナンセンスな可笑しさが友未好みです。


∮ 最後に同じ滝口アルファさまの【炎天のピエロ 川柳連作22句】https://kakuyomu.jp/works/16818093079970590753 からの3句に大トリを取って頂きましょう。


   悲しみが


   銀の三角錐になる


比喩が絶妙です!


   あるはずだ


   答えは問いの


   鳩尾(みぞおち)に


リズムは標語的でも、鋭さに唸らされます。


   ことごとく


   遺骨よ


   揚羽蝶になれ



 ずっと昔、もう何十年も前のこと、朝日新聞の川柳欄に投稿されていた幾つかの句が、今も友未のなかで愉しく詠っています。一度見たきりで、控えも切り抜きもなく、作者の方々のお名前さえわかりませんが一生消えることはないでしょう。


   定期券はっきり見せて一年生


   もう何も干す物がない晴れ続き


   白鳥の列に割り込む鴨の意地


もうひとつ、これもずっとずっと昔、何かの本で見かけた瞬間忘れられなくなってしまった川柳です。


   医者がもうあかん云うてる独逸語で


愉しくて自由な川柳が大好きです。



   仏前の梨とおはぎにりんを打つ   友未




   


   


 




 








   


   






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