アングラの里

          寂しくて林檎の尻の穴を読む


 アングラの里へのご参加、有難うございました。(→https://kakuyomu.jp/user_events/16817330665714839486?order=published_at#enteredWorks

 今回は全8作品という少な目のご寄稿数でしたが、これはテーマの特殊性から当初より想定されていた数字で、作品をお寄せ下さった皆様方に改めてお礼申し上げます。

 ただし!! 友未の基準で「アングラ」と呼んでいいかなと思えたのは8作中1作のみで、残りの作品は全てアッパーグランドな性格であるように感じられたことは正直にお伝えしておきたいと思います。考えてみればカクヨムという白日の下に開かれた場でアングラ作品を探すこと自体、少し無理があるような気もしないではありませんが、以前にも少数ながらそうしたタイプの作品に出遭えておりましたので、この様なニッチなテーマで企画を試させて頂いた次第です。ただ、アングラとは思えなかった7作品につきましても、悪意あってのご寄稿でないことは明らかですので、無視したり削除したりは致しませんでした点、他の読者様にもご了承いただければ幸いです。こうした事情から、今回は二作品のみ、ご紹介させて頂きました。


 ∮ 一つは五水井ラグ様の【ストロベリーポップキャンディー。】という作品で、胸を打たれました(→https://kakuyomu.jp/works/1177354054880874248)。正直、それほどアンダーグランドというタイプの作品ではなかったのですが、その一方で、必ずしも読み易い文章という訳でもありませんでした。最初、エンタメ作品のつもりで拝読し始めたのですが、気楽に読み飛ばして行ける文章ではないと分って、すぐに純文学モードに切り替えなければなりませんでした。筋やテーマの面白さ以上に、文章そのものを「内容」として味わいたい読者向けの作品です。

 ハルと呼ばれる高校生の僕に、それまで話したこともないクラスメイトの十時楓(とときかえで)がふいに言う。「ふうって呼んで。お友だちになろ?」彼女は他のクラスメートたちとは親しくなっていたのだが、ハルだけは「馬鹿か」とすげなく拒絶する。馴れ馴れしく友達になろうと迫る彼女を「とときかえで」としか呼ばず、冷たくあしらうハル。だが、ふたりには同じような魂の餓えがあったのかもしれない。

 風と木は似ている、とふうは言う。


   「馬鹿か。風は風だし木は木だ。ちっとも似ていない。わけ分かんないぞ」

   「でも暗闇の中ではうりふたつだよ、夜には見分けがつかないよ」


 風と木をつなぐ夜になり得たかもしれない謝罪のストロベリーポップキャンディー。だが、二つの孤独は交わるいとまもなく無惨にすれ違う。

 雨と風、夜や波の描写が、さながら心象風景そのものであるかの如く生々しく迫って来る鮮やかな筆さばきの秀作でした。


 ∮ さて、次に、コンタさまの【おしながき】。(→https://kakuyomu.jp/works/16817330656854451395

これは今回、唯一、アングラと呼んでも違和感のない、それは贅沢な、詩で書かれたフルコースのメニューでした。

 全体が、今日のランチ→スープ(いずれかひとつ)→前菜→Aコース→Bコース→パティスリー→飲みもの の七つの部で構成されていて、詩の言葉としても、料理メニューとしても凝りに凝った内容です。刺激的で千変万化なボリュームたっぷりのごちそうなのですが、物騒な言葉たちがこれでもか、これでもかと繰り出される割に、後味の悪さやの少ないところがいかにもアングラ風味で友未の口に合いました。短い最初の二つのメニューだけを見て、これくらいなら自分たちにも作れそうだと誤解される食通方がおられると不本意ですので、「Aコース」のグルメをそっくりそのままお目にかけておきましょう。


   人種差別主義者の脳みそのスタッフド・ピーマン、生姜砂糖とハチミツシロッ         

   プをかけてもかけなくても

   超富裕層のテリーヌ拷問仕立て溺死ロール蒸し風(養殖・天然)、動脈硬化の   

   くたばれ家父長制、米軍基地ミモザサラダ

   自然漏電の1000倍の放射能が必要とするので、人がヒロシマに入っても全

   然危険なし、との学者の発表トマホーク・ステーキ

   ナチ親衛隊の挟み焼きガレット・復讐のユダヤ風、高脂血症の足指そぼろと信  

   仰と反抗のキャラメリゼがけ

   ペンタゴンのアヒージョ、フォアグラスライス乗せ、肝硬変断食者の黒トリュ

   フおろしがけ

   人体細胞を破壊する、細胞核を変質させ、細胞壁を破壊した、最初の兆候は脱

   毛、下痢、発熱、歯茎の出血、白血球数の急激な減少、貧血、つまり赤血球数

   の減少、胸腔の種々の感染というような合併症リブロース、HIVワサビ醤油漬

   け、より本当のアイデンティティを成就するために

   G7の真実の追求風コン・フォーガット、発狂ライ麦パンやクラッカーに合わ

   せて国際連合の偽善者風オートキュイジーヌ、腹黒の嘘つきテリーヌと世界の

   沈黙を添えて

   夢遊病者たちのパッパルデッレ、生活実感デミグラスソース


                         (以上「★Aコース」全文)


 

         死ぬ覚悟あとでするから放っといて

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