第6話 全裸
足下がふわふわする。
床に真っ赤な絨毯がひかれているせいではない、なんというか現実感がないのだ。
なんだか、夢のなかにいるみたいな気分。
でも、確かに今の俺の状況は現実離れしている。
だって、ラブホテルの廃墟に女の子と二人きりで忍び込む。
ただの美少女じゃない。とびきりの美少女。とがった耳こそないけれど、ファンタジー小説にでてくるエルフってこんな感じってイメージの神秘的な美人だ。
「ぜったい、秘密にしてくださいね……」
そんな美少女が人差し指をピンとたてて、唇の前にもっていく。彼女自身の唇の前に人差し指をたてて「しーっ」って内緒ねの仕草をするのかと思ったら、なんとその指は俺の唇に触れた。
ほっそりとして、蝋のように滑らかで白くて冷たい指からは、微かに植物の匂いがした。
だけれど、反対側の手では俺の小指をしっかりにぎっている。
そして、扉を開けるとそこにはなんと、そこには人の住んでいる部屋があった。
いや、もちろん、部屋の大まかな枠はラブホテルのときのままなんだろうけれど。
大きな円いベッドにやたらと豪華なシャンデリアとか普通の女の子の部屋にはない。
いや、あるのか?
たとえば、お嬢さまの部屋ならば。ものすごいお嬢さまの部屋ならベッドは馬鹿でかくて天蓋つきで、天井からはクリスタルガラスのシャンデリアがぶら下がっていることもあるかもしれない。
だけれど、その馬鹿でかいベッドの横にローテーブルのまるい……ちゃぶだいっていうんだっけ? 巨人の星でひっくり返されるやつがおかれていて、あと、衣装ケースとカラーボックスが置かれている。ちゃぶだいの上には参考書まで置かれている。
どうみてもこの部屋とはミスマッチ。
あとから、だれかが運んできたみたいだ。
そんな変な空間があった。
俺が唖然としていると、女の子は部屋の内側から鍵をカチャリとかけると、やっと小指を開放してくれた。そして、ちょっと言いづらそうに小さな声で、
「あの……シャワーないんです。この部屋。見ての通り」
何を言っているのだろう。
シャワーなら、部屋の真ん中で区切られた硝子の向こうにあるじゃないか。本当に大丈夫なのだろうか。
俺はもしかして、本当に異世界にいってしまうのだろうか。中世ヨーロッパ風の異世界にシャワーは相応しくないからな。
……俺は本当に異世界やなにか冒険が始まると本気で思ってこの美少女についてきたのだろうか。
たぶん違う。
だけれど、彼女についていかなければ後悔すると思ったのも確かだ。
そんなことを暢気に考えたのは俺が現実を見ないようにしていたためだろうか。
俺が現実を見ない間、目の前では彼女が裸になっていた。
裸。
はだか。
ハダカ。
HADAKA。
HA・DA・KA!
全裸!
もう意味がわからない。
これは年頃の男の子なら普通にある妄想なのだろうか。
それとも、俺は心の中で大河内に彼女ができたことをうらやましく思っていてそのストレスが今こんな幻覚という形で現れてしまったというのだろうか。
でも、個人的な好みをいうならば、俺は女の子の下着姿をみてから全裸が見たかった。いきなり全裸は風情がない。ついでにいうならば、靴下は下着よりもあと、一番最後まで残しておくのがエッチだ。俺の妄想ならばせめて俺の好みぐらい反映して脱ぐところからちゃんと見せてほしかった。
せめて、靴下は履いていてほしかった。
なのに今、目の前の女の子は全裸だ。
今日はありえないことばかり起きている。
俺の目の前には有り得ないくらい綺麗な女の子がいた。全裸で。下着もまとわず。靴下も履かず。雪のように白い肌を惜しげもなくさらしまくっている。外からは夕日が照らしているというのに。おかげで白い肌はオレンジジュース色に染まり、影は濃くなぜだかそれはすごく寂しさとエロさを感じさせた。
そして、女の子はそっと俺の前で跪く。
何が起きているのか分からなかった。
さて、そんな訳なので読者の皆さんに挑戦です。
ものすごく綺麗な女の子とぶつかって、廃墟につれてこられて、跪かれる。←今ココ!
女の子のセリフとして次に来るのに正しいセリフはどれか?
A.貴方は異世界の王子です。私と一緒に世界を救ってください
B.ずっとタイプでした、付き合って下さい。
C.死んだ幼馴染の男の子に似ているの。一度だけでいいからセックスしよ?
親友の彼女を寝取ってしまったかもしれない 華川とうふ @hayakawa5
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。親友の彼女を寝取ってしまったかもしれないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます