第4話 初
マネージャーになることが決まり、まず今後のスケジュールを聞いた。一ヶ月先まで、1日フルでオフの日はなく、ドラマや映画の撮影、女性誌の撮影、CMイベント出演など予定がぎっしりとつまっていた。真梨さんの予定が入るということは俺も同行するので、俺の休みもなくなるということ。今までみたいに大学にもあまり行けなくなる。
その後も、マネージャーの基本的な仕事については軽く教えてくれたが、あまりよく分からなかったので結局手探りの状態からのスタートだった。
「よし、とりあえず説明は終わり。じゃあ、早速今からの撮影についてきて。」
そう言われるがままに、真梨さんの後ろをついて行った。
「渋谷さん、これからよろしくお願いします。」
これからも、なにか打ち合わせの度にここに来ると思い、渋谷さんにも挨拶をした。
無言で優しい微笑みを返してくれた。
撮影場所までタクシーで行き、支払いの時だった。
「あ、言い忘れてた。ニュースとかで見たと思うけど、前のマネージャーが辞めて、丁度良い機会だから独立したの。前の会社めっちゃ持っていくしね。だから、これからは、経費で落とす時はこのカード使うか、領収書切って現金で払うかして。類君管理よろしく。」
真梨さんが独立したのは最近のニュースで、理由は会社との取り分の問題らしい。独立したので実質真梨さんが社長のような感じ。お金の管理までもを、俺に任せた。
「わかりました。細かい作業はどちらかと言うと得意な方なので。」
「さ、中に入るわよ。」
オシャレな二階建ての建物の中に入った。
「真梨さん入られましたー!」
入ると同時に、一人のスタッフがそういうと、その場にいた全員の動きが騒がしくなった。
「五十嵐真梨です。よろしくお願いします。」
驚いた。大女優でありながら、頭を深々と下げ、礼儀正しく挨拶する姿に。芸能界で生き残っていくことができるのはほんのひと握り。その中でも最前線を駆ける人の礼儀正しい姿に、一人間として感銘を受けた。
周りのスタッフも代わる代わる挨拶をして行き、着々と撮影の準備を進めた。
「真梨さん、お久しぶりです!今日もいつも通りお願いしますよー!」
The芸能界の人間みたいな中年の男の人が話しかけてきた。
「あれ、後ろの男性は?」
「新しいマネージャーです。」
「初めまして。本日より、五十嵐真梨のマネージャーとなりました赤羽類と言います。名刺などが無くてすみません。今日はよろしくお願いします。」
思いつく限り、丁寧でそれっぽく挨拶をした。
「お、よろしくーー!俺はこの雑誌の編集長の井田って言うから。以降お見お知りを!」
挨拶とともに名刺を渡された。これからも名刺は増えるだろうし、何があるか分からないので、名刺保管アプリを入れている。井田さんの名刺が保存第一号となった。
「それじゃあ、真梨さん撮影に入りたいから衣装合わせをお願いね!」
「分かりました。」
「類君。」
「さっきの挨拶上出来だよ。」
「あ、ありがとうございます!」
真梨さんから初のお褒めの言葉を頂き、嬉しい仕事のスタートとなった。
アクトレス 赤坂ペンギン @_re_n_1024
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アクトレスの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます