第9話:大団円・ダウンシャー公爵フランシス視点

「凄いわ、ウィリアム。

 ウィリアムが強いとは聞いていましたが、ここまで強いとは思ってもいませんでしたわ、本当に凛々しくて勇ましくて素敵でしたわ」


「いやぁあ、姫君にそのように褒められると恐縮してしまいます」


「姫君だなんて他人行儀な言い方はしないでください、ウィリアム。

 私達は学園の学友ではありませんか」


 不愉快である。

 この場でウィリアムを殴りたいくらい不愉快である。

 愛娘が一目惚れするところを見なければいけない父親の気持ちなど、実際にその場に遭遇した事のない人間以外は理解できないだろう。

 思いっきり殴りたいのに、殴ったら愛娘に一生恨まれる。

 代わりにジェラルド侯爵達を骨も残さずに焼殺してやったが、全然気分が晴れないどころか。中途半端に苛立ちが残るだけだ。


「ダウンシャー公爵閣下、ダウンシャー公爵閣下、ダウンシャー公爵閣下」


 止めろ、止めてくれ、その恋する乙女の目は他に向けてくれ。

 どれほど好意を持たれても、娘の同級生に手を出す事はできない。

 前世の芸能人が、娘より年下の玄人にハニートラップされたのを記事にされ、娘に最低と言われているのを見た事があるのだ。

 赤の他人でもそんな風に言われるのだ。

 愛娘の親友に手をだしたら絶縁されかねない。


「お父様もメアリーとアリスを失ってお寂しいでしょう。

 あんな女でもお父様にっては妻でしたし、不義の子だと分かるまでは可愛がっておられましたものね。

 キャロラインなら性格はいいし美人だし、お父様の後妻には最適です。

 身分だけの性格の悪い女に後妻に入られては私が困ります。

 ねえ、キャロライン、貴女もお父様なら文句はないわよね」


 いいのか、本当にいのか。

 こんな美人の若い娘を後妻に迎えていいのか。

 そんなことができるのなら、愛娘をウィリアムに盗られる気持ちも素こそは慰められる……

 訳がないだろ、一発本気で殴らせろ。

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殺されるはずだった悪役令嬢パパに転生しました。 克全 @dokatu

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