韓国の方から『ブログで翻訳したい』とメッセージが届いたお話

月下ミト

ネット小説の転載と翻訳についてほにゃらら

 ※相手の方にはエッセイにしても良いと許可を頂いております。名前やURLは伏字にしますのでご了承下さい。


 初めまして月下ミトです。現在『やっぱりゴブリンは勇者を殺せないのだろうか?』という小説を投稿している、ごく普通のネット作家です。

 書籍化したことなんて無いし、ランキングに載った事もない。

 そんな私に突然、ツイッターでメッセージが届きました。


『初めまして!○○と言う韓国人です。

本論から言いますと、先生の作品を私の韓国のブログで翻訳したいと思って連絡しました。もし許可して頂ければ是非翻訳したいです』


 ……!? 普通に怪しい!


 数年前のことですが、なろう界隈では無断転載が問題となった事があります。その際は中国で勝手に翻訳されて投稿されているサイトがあったそうで、現在は削除されていますね。(ただし、私の調べた所では違法アップロードを含めて勝手に小説が外国語訳されているサイトが現在もありましたが)


カクヨムでは運営からのお知らせとして『当サービスを無断で利用する行為につきまして』という題で2018年4月23日に投稿されています。



 私個人の考えとしては、【著作権を守る】【お金稼ぎをしない】の2点がしっかりと守られていれば、趣味の範囲で翻訳するのは問題ないと思っています。

 カクヨム運営も『リンクを貼っての紹介』は認めているそうなので、そこさえ正しく行えば問題は無いでしょう。


 ただ勿論、転載について問題が無い訳ではありません。

 そもそも無断転載が話題となった時に問題視されたのは以下の事です。


・作者の管理下を離れるので、いざという時に削除が難しい。

・著作権を盗られる可能性。

・作者名が記載されていない。

・投稿サイトを離れて活動するので、本来のサイト運営に利益が出ない。

・アフィリエイトや広告によって第三者が勝手に稼ぐ事が可能。


 これらの問題点を解決出来なければ、正しく『転載』を行えない。

 逆に言えば、クリアしてくれれば私個人の小説を翻訳する事は拒否しません。


 ということで、まずはこのような文章を相手に送ってみました。



『ご連絡ありがとうございます。月下ミトと申します。

 投稿している小説の翻訳との事ですが、幾つか気になる点がありますので質問させて頂きます。


・どうしてこの小説を選んだのか

・どういう形で掲載するのか

・このやりとりをエッセイとして投稿しても良いか

・掲載するブログを知りたい


 以上の4点です。

 お手数ですがご回答宜しくお願いします。


 月下ミト』



 質問内容には様々な意図が含まれています。


 どうしてこの小説を選んだのか。

 これは私の小説が人気作では無いからです。

 ツイッターでの活動も最近はしていませんし、ランキングに載った事も無い。俗に言うスコップをしなければ見つけられない状況です。

 あえて選ぶ理由が説明されなければ、怪しいです。


 どういう形で掲載するのか。

 勝手に切り貼りされて投稿されては困るので。


 エッセイとしての投稿。

 公にすることで尻込みするのであれば、危険な可能性が高まります。違法な手段を用いるつもりならば、返答は無いでしょう。


 掲載するブログを知りたい。

 これは公開される場を事前にチェックするためですね。怪しいサイトや、広告が大量に貼られた営利目的のブログであった場合は拒否する理由になります。

 ざっくり言えば、偵察目的です。



 少しして、相手から返信が来ました。それぞれの質問の答えは以下の通りです。


・以前からウェブ小説を読んでいて、依頼されて翻訳もしていた。しかし最近は行っておらず、また翻訳したくなった。選んだ理由は、他の小説は内容が同じレパートリーか、既に翻訳されていたから。あ、これだ! と思った。

・カテゴリーを作って一日一話を翻訳する。

・もちろん良いです。是非。(原文ママ)

・ブログは開設したばかりで何も無い状況。アドレス付き。



 ……思ったより日本語が上手で驚きました。翻訳するという事で、あえて日本語でやり取りをして文章の読み取りの力を試しましたが、問題は無さそうです。

 私の投稿している小説は、よくあるタイプのネット小説に逆らった内容なので、そこを見て頂いたのは非常に嬉しいですね。

 っていうか似たような話ばかりと他の国から言われてしまうのは、中々に苦しいものがあります。気をつけなければ……。



 どうやら翻訳を前からやっていたらしい相手の方。能力的には問題ないでしょう。

 そしてブログの方ですが、韓国最大手の検索サービスであるNAVERのブログサービスですので変なところはありません。(日本でいうヤフーと同じ感じ)

 作ったばかりで挨拶以外なにも無いので、深読みする部分も無いでしょう。



 上の質問は大丈夫だったので、次に一番気になる部分を聞いてみます。


『ご丁寧にありがとうございます。

翻訳したい理由の主旨、理解いたしました。

私の小説を選んでいただき、本当に嬉しいです。


掲載についてですが、

・転載である事、作者名、カクヨムへのリンクの記載

・アフィリエイトやAdsense等の広告、商用利用の禁止

この2つを守って頂けるのなら、是非ともお願いしたいと思います。


1つ目は言わずもがなですが、2つ目の方は投稿しているカクヨムの利用規約で禁止されているので、アカウント停止の恐れがあり順守して頂きたいです。

(カクヨム運営のお知らせ:URLを貼り付け)


もしこの2つが大丈夫であれば、翻訳してブログに掲載する事は問題ありません。

宜しくお願いします。


月下ミト』

 重要な作者名の記載とリンク、そして稼ぐ事の禁止ですね。これが駄目なら絶対に転載は許可出来ません。



 これに対しての返答は、利用規約を守って掲載します、とのこと。


 そして実際に翻訳されて投稿された訳ですが、ブログにお知らせとして『無断コピペ禁止』『お金を得る行為の禁止』を書いて頂けました。

 小説本文でも、作者名、カクヨム内の小説へのリンクがキチンと掲載されている事を確認しました。

 韓国語は読めないのでグーグル翻訳に頼りましたが、本文も変な訳し方をせずにそのままに翻訳しているようなので一安心。

 無事に解決、あーよかったって感じです。

 


 翻訳して転載という事で、まさか私にそういう話が来るとは思っていなかったので驚きましたが、ルールとしてしっかり話を伝え、双方理解した上での転載なので変な問題は起きないだろうと思います。

 そもそものお話、勝手に転載された場合は認知する手段も無いので、今回のように許可を確認してもらえるだけ嬉しい事です。



 私は許可を出しましたが、それは幾つかの理由があるからです。

 こちらの条件を受け入れる事は前提として、自分の小説の間口を広げるのに役立つから、というのが大きいですね。

 私は英語も韓国語も出来ません。小説を書くのは日本語でやっとです。なので、他国の方に自分の作品を広める機会というのは無に等しいです。

 それを協力して頂けるというのなら、カクヨムへの動線を作る上でも非常に魅力的なお話と思いました。


 そして、ネット小説の界隈を広げる一助になる、というのも理由の一つ。

 日本で一大人気のネット小説ですが、他国にも似たような物は数多くあります。そういった文化を好んでいる他の国の方々に、日本の小説を広める機会を少しでも増やせれば、そして日本のサイトに来てくれれば嬉しいなと、そんな思いもあります。



 似たような話を受けたことのある作者様は数多いと思いますし、許可するしないは個人の判断です。翻訳してもらおう! と呼びかけるつもりは毛頭ありません。

 警戒するのは当然ですが、もし興味がある場合は、話を聞いてみるのも面白いんじゃないかな、と私は今回のお話を頂いて感じました。


 このエッセイが誰かの参考になれば幸いです。

 ありがとうございました。


 2021年2月22日 月下ミト



 追記

 近況ノートであとがきを書いていたら意外と重要な部分がポロポロ出てきたので、これを読んでさらに詳しく知りたい人は読んだ方がいいかもしれません。

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韓国の方から『ブログで翻訳したい』とメッセージが届いたお話 月下ミト @tukishitamito

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