10話.[また誘われたら]

「速いな」

「まあ、小学生時代からやっているからな」


 キャッチャーの真似事なんかをやっているが、本格的に頑張っているキャッチャーは凄えなって感想しかなかった。

 ピッチャーもやっぱり大切だが、それを受けてくれる人間がいなければならないわけだしな。


「というか、洸もそうだったのか?」

「中学のときだけな、しかも数種類の中からならって選択理由だから」

「別にそこで責めるつもりはないぞ」

「はは、なんか真剣にやっている人達に申し訳なくてな」


 ボールを返してまた捕ってを繰り返す。

 こういう過ごし方も悪くはない、走ることがメインよりは俺に合っている。


「あのときは悪かったな」

「ああ、殴ったやつか、あれは泣きたいぐらい悲しかったぞ」

「悪い、そもそも無視されたぐらいで殴ろうとすること自体がおかしいよな……」

「今度からは気をつけろ、喧嘩が強い人間に仕掛けたらボコボコにされるぞ」


 俺なんか全く対応できなくてボコボコにされたぐらいだし、そういうの得意な人間にやられたら痛い程度では済まないだろうから。


「あと、転校してきたときと部活に入るかどうかのときは世話になったな」

「ただ偉そうに言っただけだ、転校してきたばかりのときは勝幸が強制的に付きまとっていただけだからな」

「そ、そう言うなよ……まあ事実だけど」

「いいんだよ、ほらっ」

「おわっ! 俺の方が速えからな!? ごらあ!」


 久しぶりのキャッチボールは普通に楽しかった。

 誘われたらまた受け入れようと決めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

40作品目 Rinora @rianora_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説

50作品目

★0 恋愛 完結済 10話