第4話 ワシントンDC~ニューヨーク~大阪

 再び、アムトラックを利用して、首都ワシントンDCへ。ここで、数名の日本人旅行者と知り合いになり、行動を共にするようになった。ここは、鉄道駅とバスの駅が離れているのだが、みんなで行こうとしたら、ヨーロッパのバックパッカーが、ちょっと待て、ここは治安が悪く駅まで警官がガイドしてくれるんだと教えてくれた。


 ワシントンでは、やはり、とりあえずホワイトハウスを最初に観光した。一般人が、ホワイトハウスの近くを通れるので、大統領のセキュリティは大丈夫なのかと考えた。そこで、同じく観光に来ていたアメリカ人のおじさんに聞いてみた。


 すると、ホワイトハウスの方からも銃口が向けられているよと言って、ウィンクしていた。ほんまかいな(笑)。スミソニアン博物館にも行ってみた。ワシントンDCは、地下鉄駅の利用ができて、移動が本当に楽な場所だ。


 さて、いよいよ、グレイハウンドで、ラストのニューヨークへ。やはり私の頭の中には、アメリカ、イコール、ニューヨークのような イメージがあった。バスから摩天楼が見えてくると、乗客から歓声が起こった。


 ハーレムの荒涼としたエリアを抜けて、ダウンタウンへ入る。 不思議なのだが、懐かしい感情が沸いてきた。これは、ニューヨークを舞台にしたロバート・デニーロ主演のタクシー・ドライバーの印象が強く残っていたためだと思う。


 ニューヨークでは、38丁目のYMCAに高崎経済大学の合気道部の主将と宿泊。 一泊確か3000円くらいだったが、セキュリティがしっかりしているし、一階にはカフェもある。


 入口の向かい側に、安くて美味しい中華のお店があり重宝した。ここで焼肉弁当を買って、YMCAの部屋で日本人旅行者たちと一緒に話をしながら食べたりして楽しかった。そこで、女性の旅行者に聞いた話がある。


 「ねえねえ、知ってる?レンタカーでサンディエゴからメキシコのティファナに入った人なんだけど、ハイウェイをガンガン飛ばして、警官が二名乗ったパトカーに捕まったの。そして、罰金50万円も言い渡されたんだって!」


 「えー、マジ?」と、一同。


 彼女は、興奮して話し続けた。


 「それでね、彼、そんなお金ないので、負けてくれって交渉して、40万、30万、20万、10万、5万まで下げたんだって。でも、もう一口、3万と言ったところで、両手首に手錠がかけられて、こめかみに銃口を突き付けられたって!」


 「それ、本当の話?」と、一同で笑った。


 その後、みんなで、ウォール街へ行ったり、セントラル・パークへ行ったり、エンパイヤ・ステートビルに上がって、街を俯瞰ふかんしたりて楽しんだ。夕食は、やはり観光に来ていた北欧の女の子二人と合流して日本食レストランへ行った。


 また、私は、翌日ハーレムにも出向いて、目抜き通りを歩いてみた。本当にアフリカ系アメリカンしかいない。まさに、黒人の首都である。ここで、記念品として、Tシャツを購入した。今になって思えば、これがアメリカでの最大の収穫だった。なぜならば、日本人はカラードであるからだ。


 そして、ソーホーで恋人にセーターと母親に猫の小さな置物を買った。帰国の日、YMCAのアドレスを交換した人達と、またねー、とあいさつし、ジョン・F・ケネディ国際空港から日本へと飛び立った。


 帰国して一週間後、田原と会った。


 「お前、旅行どうやってん?ん?ところで、知ってるか?メキシコのハイウェイで飛ばして、ポリにピストル突き付けられた日本人の笑い話」


 「それ、………………俺やねん」と、田原は言って自分を納得させるようにうなずいた。 


 「お前、マジか!?大体、メキシコ入ったって、地図見て運転してへんかったんか?」


 「………………………」


 「地図見てへんかったって聞いてんねん!」


 「………………………、でも」


 「でも、なんやねん?」


 「罰金払った後、米国へのボーダー・コントロールまで、パトカーが先導してくれたのが、VIPになったようにようで嬉しかってん」


 「………………………(-_-;)」


 そして、こんなん、こんなんしよんねん、と言って田原は、数回自分のこめかみに銃を突きつける仕草をした。トラウマになったようだ。ロサンゼルスに向かったという時点で、もしかしてこの笑い話の主人公は、コイツかという予感はあったが、まさかなとは思っていた。


 俺に「固いこというなや!」なんて大声出して睨むから、こんなことになったんだ。おとなしく俺についてくれば良かったものを。最後に、オチがついたところで、私のアメリカ大陸横断旅行は締めくくられた。

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アメリカ一人旅 藤原 博 @Donnieforeverlasvegas

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