ポインセチア
最近は日が沈むのが早いな、と感じられる季節になったと思う。
辺りは暗くなり、それを隠すかのようにイルミネーションが光り始めた。
イルミネーションを見るのは何年ぶりだろう。
久しぶりに見るイルミネーションはとても綺麗で、少々興奮してしまった。
もしかしたら、綺麗に感じられたのは僕の心が綺麗だからだろうか。いや、そんなことは絶対ないな。
独り言を言いながら歩く帰路は寂しく、イルミネーションが独り身の僕を責めているように感じられた。
イルミネーションを見るカップルとすれ違う度に、興奮していた気持ちは落ち着き、そして段々と寂しさへと変わっていった。
気持ちを落ち着かせようと思い僕は、音楽を聴く為にスマートフォンとイヤホンを取り出す。
悴んで思うように動かない指をゆっくりと動かし、音楽を流そうとした。しかし努力は虚しく、ロック画面からカメラを起動してしまった。
そしてそれと同時に、カメラで映った景色が目に入る。
あの人が大好きな花。赤くてとても綺麗な、ポインセチア。
クリスマスフラワーとも呼ばれ、冬には装飾に使われることも珍しくない。
僕は懐かしさと寂しさで胸がいっぱいになる。
しばらく立ち尽くしていたが、ふと我に返った途端大切なことを思い出した。
そしてそれと同時に、ある場所へと走り出していた。
寒さで指は悴み、もう感覚は無い。
冷たい空気が僕の身体を中から冷やし、徐々に体力が削られていく。
どのくらい走っただろうか。必死に走っていた僕は目的の場所へ着き、胸を抑えながらある場所へ立った。
僕は途中で買った赤い花を、いくつも花が飾られている所へ飾る。
そして震えながら膝を着き、僕は蚊の鳴くような弱々しい声を出す。
「誕生日おめでとう。いつも見守って居てくれてありがとう」
言いたかった言葉を言うや否や、僕はその場所を後にした。
十一月九日。大好きだった彼女の誕生日。
ポインセチアの花言葉は「祝福する」だ。
また来年も、彼女と僕が大好きなこの花を贈ろう。
君に贈る花とともに 赤坂 葵 @akasaka_aoi
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