道草

紗里菜

      道草

 大学受験に失敗した。合格間違いないって学校も予備校の先生も太鼓判を押していたのに、しくじった。


 どこの大学でも四年間きちんと学べば社会に出て役に立つというけど、〇〇大学のOBが多い☓☓会社は雇ってくれないだろう。


 それに、今にしても有名大学の合格以外は「ふーん」で終わる予備校への報告、合格実績重視の高校への報告へなんて行きたくもない。かと言って、お赤飯を炊いて待っている家にももっと気まずくて帰りたくない。


 私は2月で人のいない公園の芝生の上にへたりこんだ。へたり込むふくらはぎをさす草がちくちくして痛いと思うと同時に草の匂いがもわんと漂って道草の言葉通りだって瞬間思った。


けど、この言葉は私のように現実逃避したいわけではなく、目的地に急いでいる時に乗っている馬が草を食べて本来の目的でないことに集中するのが、語源であって、飼い主は焦っているだろうが、どこにも行き場のない私よりは幸せだと思った。


 そんな自分を卑下している時にかかってきた。一本のケータイ電話。自宅からの電話に息をひそめて留守番電話に録音されるのを待つ。


 数分が、何時間にも感じる時を経て、再生すると母の呑気な合格おめでとうというテンションの高い声。


 だから大学落ちたんだって、留守番電話を消そうとしたけど、違和感を感じ、記憶を手繰った。


 そういえば記念受験した○☓大学からの補欠合格になるかも知れない知らせは私も受けていた。


 しかし、六大学ほどじゃないけど、偏差値も知名度も高いこの大学の補欠はまずないだろうと思って私は考えないようにしていたのに、奇跡がおこった。


 がばっと私は立ち上がり、慌てて母に電話をした。テンション高い母の声はもう〇〇大学のことなどなかったように手続きに今から行くと伝えてきた。


 私も、○☓大学なら高校も予備校も歓迎だから足取りも軽く高校へむけてスカートについた草をはらって立ち上がった。


もう草の匂いも道草の由来もさっきまでの絶望も全部忘れ、私は駆け出す。




 


 



 

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道草 紗里菜 @sarina03

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