物語編


死神としての禁を破ったバラッドは、神より罪を償う機会を与えられる。

それは悪神と呼ばれる神によって、各世界に散らばった転生者を殺し、その魂を本来の世界に返すという役割だった。

バラッドが通された神託会議にて、ジャンクという転生者殺しの役割を与えられた男と会い、彼と協力して転生者を狩る事になる。その際、神より彼は悪神の息子であり、いずれは世界に害を成す存在となる可能性があるので、監視するのも仕事だと言い渡され、二つの仕事を同時に行う事になった。


世界番号557世界に降り立った二人は、さっそく世界の状況を確認する為に、世界を管理する神に会う。

この世界は数年前まで魔王によって蹂躙され、滅びに向かっていた。そこに聖女エリスという転生者が現れ、彼女と、彼女の守護する騎士クリフ、エルフの魔法使いの活躍で魔王は討伐され、平穏を取り戻したと説明される。

ジャンクはエリスの能力と、彼を守護するクリフの戦闘能力を確認し、どのようにして殺害するかを模索する。

オールドランド王国に向かい、そこでジャンクは異世界で手に入れた銃器を取り出し、狙撃によってエリスを殺害しようとするが、彼がエリスに照準を定めた瞬間、クリフがこちらに気づき、失敗に終わる。

ジャンクはクリフの存在が今回の仕事で一番の障害となる事と確信する。


ジャンクとバラッドは国王のヴァーレルと面会する。転生者殺しの存在は神によってジャンクが必要となる者に、一時的に世界のルールを植え付ける事が出来る。世界のルールを知った国王はジャンクを歓迎する。

国王は聖女の存在によって、自分の立場が危い事を伝え、エリスが死ぬ事はこちらにとっても都合が良いのでどんな協力も惜しまないと言う。それを聞いたバラッドは、こんな国王で国民は大丈夫なのかと心配するが、ジャンクは国の現状と自分達の仕事は関係ないと言い、他に協力してくれそうな者がいないか尋ねる。しかし、国王は自分が聖女殺しに加担する事は、自分の立場を危うくするので、余計な事は言おうとしなかった。


ジャンクは遠方にある魔族の領地に向かうとバラッドに伝え、彼女には此処に残って情報収集をするように命令する。バラッドはジャンクの監視の為に抵抗するが、彼女の抵抗を無視してジャンクは魔族の領地に向かう。

残されたバラッドは城下に向かい、そこでエリスの姿を確認する。遠くから観察するだけだが、彼女が多くの国民に好かれ、それに価するだけの人物であり、次の王となるならば国民は安心できると誰もが口にしている事を知る。

バラッドはそんなエリスを殺す事は正しいのかと疑問を抱く。

そんな時、街の近くで爆発事故が起こり、バラッドも巻き込まれた。多くの怪我人が出ている中で、必死に人々を助けようとするエリスを、バラッドは自分の役目も忘れて手伝ってしまう。


魔族の領地にて、ジャンクは魔王の娘であるミレーヌ、魔人のゲインと面会する。

魔王の娘である為、聖女殺しには積極的に協力してくれると踏んでいたが、ミレーヌは拒否する。

父親の死は、正々堂々の戦いの末の結果であり、その事に対して恨みはない。エリスに対しては快くは思っていないが、その戦いの結果に異議を唱えるのは、父への冒涜になるとミレーヌは言う。

そして、現在の魔族は周囲から蔑まれ、どんどん勢力が小さくなっている。聖女を殺す事よりも、自分は新しい王として魔族を守らなければならないと言って、聖女殺しは勝手にしろと言って、拒絶する。


事故現場でエリスを手伝ったバラッドは、エリスと仲良くなってしまう。クリフもバラッドの存在に疑問を抱きながらも、エリスが信じるならば良いと言う。

エリスとの会話で、彼女が世界を魔王の手から救った事で、人は救われたが魔族は虐げられてしまっている。だから、自分は人と魔族が共に生きている世界を作りたいから、今も世界中を旅していると言う。

その晩、クリフはバラッドにエリスの言う事は夢物語ではあるが、彼女はそれが出来る者であり、彼女が何処までそれを出来るのかを見る事が自分の生き甲斐だと口にする。同時に、魔王との闘いで死んだエルフの遺言でもあり、自分が死ぬまで彼女を守るという誓いを聞き、バラッドは改めてエリスの死が必要なのか疑問を抱きだす。


ジャンクと合流したバラッドは、ジャンクから協力が仰げそうなのは国王だけだと聞き、国王にエリスとクリフが離れらる機会を作ってもらう手筈を整えてもらうつもりだと言った。

だが、バラッドはジャンクは本当にエリスを殺さなければいけないのか、彼女が死ぬまで彼女を生かしておく事がこの世界の為ではないかと言う。ジャンクは転生者は死ねば悪神の一部になり、復活に近づいてしまう。さらにその魂は破壊され、此処で殺しておく方がよっぽどマシだと言う。

バラッドはそれならば、彼女が死ぬ時に自分が魂を正しい場所に導けば、良いだけで、今すぐに殺さなくてもいいのではないかと言う。

ジャンクはバラッドにこれは仕事なのだから、自分の仕事だけを全うして、余計な事は考えるなと一蹴する。


国王が聖女を招き、パーティを開くと宣言した。その事を記事にした新聞屋のソーマは国王が突然、こんな事を言いだしたのかと疑問に抱く。彼はエリスの取材をしていく上で、国王が如何に聖女を蔑ろにしているかを知っているからこそ、これには何か裏があるのではないかと考える。

ソーマはエリスに会い、今回のパーティに行くのかと尋ね、エリスは国王の為に出席すると言う。ソーマは彼女に国王は貴女に良い感情は抱いていない、これは何か裏があるのではないかと伝える。そして、エリスこそが次の国王になる事を国民が望んでいると言うが、エリスはそれは自分には不釣り合いだと否定する。更に自分は人と魔族が共に生きれる世界を作る為に動くのだと言う。

エリスが去った後、ソーマは怒りを覚えた。彼は魔族に家族を殺され、魔族の存在は世界にとって害にしかならない。だから魔族はこの世から消えるべきだと思っていた。だというのに、聖女はそれとは反対の選択をしている。

ソーマは聖女を尊敬しているが、どうして尊敬する相手がそんな戯言を口にするのかが理解できなかった。


城で行われたパーティで、エリスは国王から自分の息子に会って欲しいと言われる。国王の息子は才能ある子供であり、聖女と話してみたいからだと言う。エリスは喜んで国王の頼みを聞き入れ、パーティ会場から王子の部屋へと向かう。

王子の部屋ではジャンクが隠れており、エリスが来るのを待っていた。

作戦としては、王子が二人だけで話したいという事を強調し、クリフには国王が直々に話があると言って一時的離れてもらう。その僅かな時間で部屋に入ってきたエリスを殺すという手順を用意した。

ジャンクは拳銃に自分の血で作った弾丸を装填する。

ジャンクには悪神の力として、必ず相手を殺す能力がある。その能力は相手が不死、もしくは不死に近い程の力を持っていたとしても問答無用で殺すというもの。さらに重傷を負ったエリスが自分を治癒したとしても、悪神の力が宿ったジャンクの能力で傷つけられれば、治癒能力は完全には機能しないという、転生者の力を弱める能力も持っていた。

この二つの能力でジャンクはエリスを殺害しようとしていた。

だが、エリスが部屋に入ってきたと同時に、クリフが現れ、ジャンクに襲い掛かる。


クリフとの戦闘は、純粋な戦闘能力の差でジャンクが劣勢となった。どうしてクリフが此処にいるのかと疑問に思いながらも、必死に応戦するが覆す事は出来ない。そして、戦闘の中でエリスの傍にバラッドが居る事を目にし、彼女が裏切った事を知る。

戦闘の最中、パーティに忍び込んでいたソーマは二人の戦闘を目にする。そこでジャンクがバラッドに向けた言葉で、国王がエリスを暗殺しようとしている事を知る。

クリフの攻撃でジャンクは致命傷を受け、川の中に飛び込んで難を逃れる。

その光景を見ていたバラッドは、自分の行動は間違っていない、この行動はこの世界の為になるのだと自分自身に言い聞かせる。

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