第215話 自称宰相の破滅
―コルテス子爵視点―
王都から出陣したわが軍は、挙兵した地方兵団総監率いるシッド将軍の部隊と対峙していた。
総兵力は、こちらが5万。
シッド将軍が3万。
それも向こうは地方兵団中心の2軍だ。
完全武装された王都防衛師団が負けるわけがない。
だが、アレンもあの賊軍には合流している。指揮官二人の有能さだけは気を付けなければならない。
まあ、宰相命令で各地に散らばっている正規軍はこちらに合流するようにしているから時間が経てば経つほどこちらが有利になる。数的な優勢は時間が経てば経つほどこちらのほうが大きくなっていくからだ。
「コルテス宰相閣下っ!! 第2師団と、第4師団がもうすぐこちらに到着します。こちらの斥候部隊が目視で、各師団の旗を確認しました!」
「よろしい。これで戦力は8万対3万だ。両師団が合流したら、総攻撃を行う!」
「わかりました」
勝利はもうすぐそこまで来ていた。この絶望的な戦力差であれば、いくら名将であってもどうしようもないはず。
シッド将軍を倒すことができれば権力は確実に掌握できる。
これがクルムとわが娘のルイーダを王座につけるための最後の山場だ。
※
第2師団と第4師団は戦場に到着した。
しかし、そこには信じがたい事実が繰り広げられていた。
両師団は、こちらではなくシッド将軍側に合流したのだ。
両師団旗が、敵軍にたなびく。
あいつらの裏切りが確定した。
『正当な手続きによらない権力の継承は認められない』
『自称・国王陛下と自称・宰相閣下を排除し、ルーナ宰相閣下を取り戻す!』
『王族といえども、法令に従わなければ、大罪人にすぎない』
そんな怒号が向こうから聞こえてきた。
両師団が裏切ったことで、数の上でも5万対6万。もしかすると、ほかの師団もこちらを裏切るかもしれない。
そうなれば、さらにこちらが不利になる。
兵たちにも動揺が広がる。士気は下がっている。このままでは戦線はもたない。
こうなったらやるしかない。
「全軍突撃だ! ここで功績を残せば、将来の栄転は約束されたものだぞ! 王族はこちらを支持してくれる。さあ、行け」
私が突撃を命じた瞬間だった。
空中から魔力の光が発生したと思えば、近くにいた幕僚たちが吹き飛ばされた。
『空中からの攻撃だ!』
『まさか、解散されたファントムが復活したのか!』
『王国最強の部隊が来たぞ』
兵たちの動揺は広がっていく。まずい、どうする。動揺して考えがまとまらない。
俺が空中からの攻撃をぼう然と見ていると、前面の敵が動き出した。
『だめだ、こんなんじゃ勝てるわけがねぇ』
『家柄だけの指揮官じゃだめだ』
『だって、あいつは法律家だろ。いくら軍籍があるからって、なんで兵を率いているんだよ』
『たたき上げでのし上がったシッド将軍やアレン将軍に勝てるわけがねぇんだよ』
『こんなところでおろおろしたら死ぬぞ。バカ貴族とバカ王子に付き合っていられるかよ。俺は逃げるぞ』
すでに、我が軍は軍団としてのまとまりはなかった。
「逃げるぞ。後方に戻って軍を立て直す」
「無理です!! 敵軍が猛スピードで突撃してきます」
地面が震えている。騎兵たちがこちらに向かって突撃してきた。
逃げようと思っても、さきほどの空中からの攻撃で馬が吹き飛ばれていたことに気づく。
もうどこにも逃げ場はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます