第212話 国王暗殺
「ルーナ、起きてくれ。大変なことが起きた!」
私は議員宿舎で、アレンに起こされた。
「まだ、深夜じゃないですか。なにがあったんですか?」
「ああ、ついさっきだが、近衛騎士団の後輩から速報が入ったんだ。王宮で爆発が発生した。被害は不明だが、大きな損害が出ているらしい」
「えっ!! 国王陛下の安否はどうなったのですか?」
アレンは首を横に振った。
「爆発は国王陛下の寝室付近で発生したようだ。救出作業は進んでいるが、まだ陛下は見つかっていない。おそらく絶望的だろう」
「犯人は……まさか、王子が暴走を?」
「まだ、何もわかっていない」
このタイミングで国王陛下を暗殺する動機があるのは、王子一派だけ。政局に混乱を引き起こして、何かを狙っているのね。
いや、自ら国王になって私を潰すのか……
そうであれば、あいつらが繰り出す次の一手は……
私の排除ね。
「アレン、今すぐ王都を脱出して。それから、シッド将軍と合流を。最悪の場合は、あなたの軍事的な才能にすべてを賭けます」
「なら、一緒に脱出を?」
「王子のことです。すでに、戒厳令を発しているでしょう。王都防衛師団はすでに乗っ取られている。私が一緒では、あなたまで逃げ切る可能性が低くなります。それに……」
「それに?」
「民衆を捨てて逃げだせば、次期宰相として信用されなくなります。やっていることは、保守党議員と変わらない」
「しかし……」
「大丈夫ですよ。私は、
「ああ、絶対に約束する」
そして、私たちは別れた。再会を約束して。
1時間後。
宿舎には、兵士たちが詰め寄せる。
そして、私の部屋の扉を蹴り破って乱入してきたわ。
「ルーナ=グレイシア元老院議員ですね」
「ええ、そうですよ」
「あなたを逮捕させていただきます」
「何を根拠に?」
「あなたには国王陛下暗殺に関与した嫌疑がかけられています」
「その証拠を見せてはくださいませんか?」
「その必要はありません。上からは、あなたを即座に逮捕し政治犯収容所であるバルドロン監獄に連行しろと命令を受けています」
「それは誰の命令? 私はこの国の次期宰相ですよ?」
「クルム国王陛下のご命令です」
「……なるほど、やはりそうですか」
「それではこちらへ」
私はゆっくりと馬車に向かって連行されていく。
私はアレンとこの国の人々のことを信じている。だから、何の心配もしていない。
そして、このクルムの暴走が、革命の導火線になると確信して、私は馬車に揺られた。
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