第207話 選挙結果
―自由党本部―
私たちは自由党本部に詰めながら、各地の選挙結果を聞いていた。
選挙の開票がはじまってから結果が確定するまでに数週間はかかる。
遠く離れた地区の開票結果の連絡には時間がかかるものだからね。
おそらく今日、すべての選挙結果が出そろう。
ここまでの速報値を考えれば、私たちの勝利は揺るがないはず。
でも、保守党がなりふり構わずに不正選挙をする可能性だって残っている。
私たちは緊張感をもって、選挙開票最終日の結果を待った。
「ルーナ、いよいよだな。覚悟はいいか?」
アレンは不安そうな私を気遣って声をかけてくれた。
「ええ、もちろんです。覚悟がなければ、政権交代が望める選挙で自由党総裁なんかになりませんよ」
「それもそうだな。いらぬ心配をしたかな?」
「ううん、ありがたいですよ。アレンがいなければ、私は今日、クルム王子の喉ぼとけにナイフを突きつけることはできなかった。どこかで暗殺されて終わってましたよ」
「そうならなくて本当に良かった」
「私もそう思います」
そこにフリオ先生がやって来た。
「ふたりとも総裁室でイチャイチャしている時に申し訳ないが、選挙結果が確定した」
そう言われると少しだけ恥ずかしいけど、その前に緊張の方が勝ったわ。
動悸のように心臓が高鳴る。
「フリオ最高顧問、結果はどうでしたか?」
「ああ、結果は……名誉元老院議員も踏まえた元老院の議席数で話すぞ?」
「はい、そのほうがわかりやすいですからね。お願いします!」
ふうっと深呼吸をしながら、フリオ様は結果を読み上げた。
「保守党が200議席、自由党が253議席、その他の政党が20議席。自由党が安定的な過半数を確保した。山が動いたよ、ふたりとも!」
その瞬間、総裁室は10年間一緒に戦ってきた3人の歓喜の声が響き渡った。
何年もの努力が実を結んだ瞬間だった。
「ふたりとも今までありがとうございました」
私は目に涙を浮かべながら、ふたりの手を取った。
「何を言っているんじゃ?」
「ここからに決まっているだろう? まだ、スタートラインに立ったばかりだ」
「そう、ですね。そうなんですよね」
ふたりはゆっくり頷いた。
「「ああ、これから頑張っていくぞ、ルーナ新宰相閣下?」」
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