第195話 世界を変える夜

 そして、私たちは久しぶりに家で横になる。

 この時間が私にとっては一番幸せな時間。


「ずいぶんと難しいことを考えているんじゃないかな、ルーナ?」


「ええ、ちょっとだけ仕事のことを考えていました」


「仕事のこと?」


「はい、ルイちゃんのように自分で働きながら学費を稼ぐのも素敵だと思います。でも、子供は国にとっては宝です。国からも勉強をし続けたいと思う真面目な学生に何か援助できる体制を作りたいと思っているんですよ」


 基本的にイブール王国の学制は、貴族教育のために作られているわ。少しずつ改革は進めているけど、まだ不十分。


 貴族や富裕層のための教育制度。

 だからこそ、彼らを教育するためにしか考えられていないので、庶民が同じ制度で学ぼうとすると無理がたくさん出てくる。


 だからこそ、抜本的な改革が必要なのよ。いまは、変化期ね。


「うん、いい考えだ。具体的には?」


「成績優秀者には、国から奨学金ということで援助を出すとかですね。ただし、その場合は財源を確保しなくてはいけません。庶民に課税する余地はほとんどありませんから……やるとしたら」


「貴族階級か。反発は来るだろうね。それも庶民のために貴族から課税するとなれば間違いなくつぶされるね」


「ですがやるしかないと思います。この国を変えるためには。それに、教育費無料の大学も設置するのが私の大臣としての目標です」


「教育費無料の大学?」


「ええ、他国では教育者を養成するための師範大学や将来の高級軍人を養成する軍事大学など設置されていて、それらの学費は無料になっているんです。国を担う人材を育てるために必要な機関ですからね」


 特に、グレア帝国は師範大学が国の最高教育機関になっているくらいよ。

 教師の人格や知性は、子供たちに大きな影響を与えるからそういうところを評価されているのね。研究機関としても優遇されていてたくさんの予算が回されている。


 そう考えると、この国は遅れてしまっている。


 ヴォルフスブルクやグレアは、貴族の力は抑えられていて庶民もしっかりと権利を獲得している。


 だからこそ、国が一丸になっているのよね。そう考えると、貴族階級という特権階級の力が大きすぎるイブールは、階級ごとに分断されていると思う。


「ルーナなら大丈夫だ。俺たちもしっかりサポートするから、自分が考える道を突き進んでくれ」


「ありがとう、アレン。あなたがいてくれるからこそ、私は前に進むのを恐れない」


 次の元老院が最大の山場になるわ。

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