第194話 幸せ
私たちはルイちゃんの家でご飯を食べた。
トマトと野菜のパスタ。
残り野菜で作ったベーコンのスープ。
とてもやさしい味のその食卓は、私たちを幸せな気持ちにさせてくれた。
そして、私は家に帰った。村の人たちが私がいつでも帰ってきていいように掃除をしてくれているから、いつもきれいになっているわ。
やっぱり、私はここが一番よね。
「とてもやさしい顔になっているな、ルーナ?」
「たまに、妄想することあるんですよ。政治家を辞めて、あなたとこの村でみんなの笑顔に囲まれながら、普通の暮らしをするのもいいなって。アレンは思いませんか?」
「ああ、キミと普通に結婚して楽しい新婚生活をここで送れるなら最高だな」
「ですよね。私もそう言う人並みの幸せを送れたらいいなって思います」
アレンは少しだけ寂しそうな顔になる。
「もしかしたら、俺がキミに余計なものまで背負わせてしまったんじゃないか。実は、それが怖かった。ルーナは本当は政治の世界になんかに戻りたくはなかったじゃないかって。きみは、王子の婚約者時代からずっとつらそうだったし、いまだって王子との政争に苦しんでいる」
「たしかに、苦しくないなんて言ったらうそになりますよ」
「だよな。俺のために頑張ってくれているなら、気にしないでくれ。ルーナには幸せになる権利がある」
彼は優しいな。そういうところが、私は好き。
「でも、それだけじゃないですよ。ずっとやりがいは感じています。ルイちゃんやバルセロク地方の住民の人たち。私が頑張れば頑張るほど、みんなは笑顔になってくれる。そして、みんなが幸せになれば、こんなに幸せなことはない」
「だが……」
「やりがいは本当に大きいんですよ。たしかに、物質的には貴族時代の方が、個人の自由度で言えばこの村で単なる平民として暮らしていた時代の方が、よかったのかもしれない。でも、そのままじゃ私はこんな幸せな生活はできていないんですよ。この10年間、死にそうな目に何度もあいました。でも、もしまた自分に生まれ変わったら、この10年間をもう一度繰り返したいと思います。失敗はたくさんありました。でもね、後悔はないんですよ。今の私を誰にも否定してほしくない。私がここまで来れたのは、アレンのおかげです。2人でここまでやってきた今までの功績が不幸なわけないですよ」
そして、私は力強く彼の手を握った。
「すべてが終わってこの国を変えたら、一緒にここで暮らしましょうね」
まるでプロポーズみたいな言葉をつぶやいて、私たちはキスをする。
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