第164話 迂回路
「陛下、こちらからバルセロナ市に向かうには2つのルートがあります。まずは、森を抜けるルートです」
幕僚たちとの作戦会議が始まった。
「だめだ。森はゲリラ戦に適している。そちらの方向に行けば、敵の思うがままになるだろうね」
本来なら海路という選択肢もあるんだけど……
だが、バルセロナ市の沿岸は、事実上の要塞。グラン海賊団ですら、沿岸線に配備された大砲によって、船団はほとんど壊滅した。事前に、陸上に潜入していた海賊団員がいなければ、小国に匹敵する海軍力を持つ海賊団が何もできずに壊滅していたことになる。
逃げ場がない船上からの攻撃は、大きな被害が出るため最初から選択肢に入れていない。
だからこそ、僕たちには最初から海路という選択肢は存在していなかった。
そもそも、バルセロナ市は自然の要塞ともいえる。
「であれば、東ルートで進軍ですね。こちらは比較的に見通しが良い平原が続きますから……ただ、問題は
「ああ、だが見通しが良ければ、奇襲の心配はなくなる。あとは、数の平押しで勝てるだろうよ。そうすれば、僕たちがこの国の本当の王になれる」
リスクを考えれば、森よりも平原を進んだ方がいい。渡河中に敵主力が戦闘を挑んでくる可能性もあるが……
その時は僕たちが数の暴力で押し切ればいい。多少の犠牲はでるが、総兵力に5倍近い差がある状況を考えれば、人海戦術で間違いなく勝てる。
伏兵戦術が使えないならば、怖くはない。罠を仕掛けるには、見通しが良すぎるから。
もちろん、アレンたちもよくわかっているだろうね。だからこそ、あいつらの狙いは市街戦か……
焦土戦術をとって、補給切れを狙うしかあるまい。まあ、それなら僕たちにとってもメリットしかない。だって、自分が作り出した自由党の牙城を自壊させなくちゃいけないんだからね。市街戦となれば、自由党の施政下で勘違いした庶民たちを問答無用で粛清できる。
庶民に知性なんて与えたらどんな反乱がおきるか……
だからこそ、自由党の学校はこの機会を使って完全に破壊してやる。自由と権利なんてものは、僕たちのような貴族しか扱えないんだよ?
自由をすべて壊して、僕は絶対的な王になる。軍事を優先した富国強兵をしなければ、列強国にいつかイブールは併合される。そうすれば、すべての者が他国の奴隷になるんだから……
王国の守護者として僕は僕なりの責任をはたす。この国を守るなら、僕は悪魔にだってなれるんだからね。
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