第161話 公爵動く

 ここからは時間との勝負になるね。僕は、一気に王都の守りを固める。

 まずは、国王陛下の退位をのませた。これは自発的な退位だからね。そして、彼はぼくを指名したことにした。これでいい。実際、陛下は時計塔に幽閉していて、僕とは一切話してないんだけどね。


 この世界は、力がすべて。力がない者は、ただ食われていくだけ。そう、我ら貴族には力がある。庶民は力がないから、食われるだけだ。


 なのに、あの女たちはそれをひっくり返そうとする。

 偽善者め。


「これで僕は、オリバー1世だ。新しい王朝の始まりだね」


「新国王陛下。次はどうしますか」

 幕僚の一人が僕にそう聞く。


「王族を時計塔に幽閉した今、次の脅威は、元老院議員だ。奴らは存在するだけで権力を持っている。だから、その権力を奪おう」


「はっ……」

 どうやらピンと来ていない様子だな。


「国王権限で、元老院を解散する。戒厳令を出しているから、それを根拠法とすることができるだろう。そうすれば、国王である僕が絶対的な力を持つことになる。最高の国家が誕生するよ」


「さすがです、国王陛下」


「ありがとう。ちなみに、軍はどうだい?」

 

「まだ、ほとんどの軍団は、中立を宣言しています。こちらに与すると表明したのは、第3師団だけです」

 王都防衛師団と第3師団の総力は3万。イブール王国の20パーセントの戦力だ。


「だろうねぇ。まだ、クーデターが成功したとは言えないから。さすがの政治力だよ、バルセロクの臨時政府は……向こうに味方すると表明した勢力は?」


「各地方庁は、かなり好意的なようです。やはり、クルム第一王子の存在が大きいようですね。それに、軍事的な実績がアレン退役大佐とシッド少将が参加していることも……」


「だけど、地方庁が動かせる地方兵団は、自分たちの地方を守るために動かせない。それに、僕たちの狙いはバルセロク地方だけだとわかっているだろうからね。好意的な姿勢は出せても、直接的な支援はできないだろう」


 だから、数的な優勢は覆せない。


「バルセロク地方側の兵力分析はどうなっている?」


「地方兵団5000が主力戦力です。あとは、各師団から抜け出した義勇兵やアレンを慕う近衛騎士団の一部が自分の意思で参加しているようですが、おそらく500前後でしょう」

 なるほど、3万対5千か。6倍の戦力差。負けるわけがない。


「よし、ならば王都には5千の兵力を残して、2万5千の兵を率いて、バルセロク地方に出陣する。王自ら親征するよ」


 バルセロク地方が敗れれば、あとは中立勢はせきを切ったように僕たちの味方になる。そして、すべてが手に入るんだ。


 笑いが止まらない。

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