第159話 臨時政府発足
―バルセロク地方庁舎―
これで正式に臨時政府が発足した。
法令上の臨時代理3人がそろった。これで軍事クーデター側は正当性を失う。
そして、私は記者たちを集めて今回の件の説明を行う。
「記者の方たちには、突然の招集をかけてしまい申し訳ございません。今回、お集まりいただいたことは、国家の緊急事態でありますのでご了承ください。すでに知っている方々もいらっしゃるとは思いますが、王都でクーデターが発生しました。首謀者は、王都防衛師団の師団長・オリバー公爵だと思われます」
私の宣言に、会場は騒然となった。記者の間にも動揺が広がる。
「すでに、国王陛下・宰相閣下・閣僚の方々・大部分の元老院議員は拘束されました。現在、我が国の首脳陣は執務ができない状況です。よって、私はイブール王国緊急事態法にのっとり、ここに臨時政府が発足したことを宣言します。今回、私は臨時政府の
『まさか……宰相臨時代理の就任順位はどうなっているんだ』
『閣僚のあとは、総督と知事ですが……そうか、王都の総督もおそらく拘束されている』
『ならば、法令上に従った正当な宰相代理ということか……』
『優秀だと思っていたけど、まさかこのタイミングで宰相臨時代理……一体、何人抜きだ?』
『10人以上は飛び越えただろうよ』
記者たちが次々と情報を交換している。私は、みんなが落ち着くのを待った。
『でも、宰相代理だけでは、臨時政府は発足できないはずだ』
『そうだ、王族の協力者がいなければ……』
『いったい、誰が協力者になっているんだ?』
私は記者の人たちの発言に
「それでは、臨時政府の代表をご紹介しましょう。イブール王国第一王子であり外務省副大臣でもあるクルム=イブール殿下です」
私がそう宣言すると、後方からクルム王子が登壇する。会場が一瞬静まり、王族への礼儀のために起立する。
「また、元老院の仮議長も紹介させていただきます。アレン=グレイシア氏です」
『聖女と次期国王、そして、英雄……次代のエースたちが勢ぞろいか」
『まさか、政治的に対立していたはずの王子と聖女が手を結ぶとは……』
『クーデター軍もここまで正当性を確保した臨時政府が作られては焦っているだろうね』
『あの3人は、おそろしい手腕だよ。あの若さでここまでの政治的な能力を見せるとは』
私は息をついて、落ち着かせながら言葉をつづけた。
「クーデター軍は正当な手続きを経ずに、違法行為で政権を奪いました。これは許されない国家の
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