第158話 臨時政府

―ルーナ視点―


 アレンは無事に4人の部下を伴って帰還する。アレンは少しだけケガをしていたけど、問題はなさそうだった。


 そして、私達3人は密室で現状を確認する。


「まさか、この3人で集まるとはな。運命とは恐ろしいものだ」

 王子は苦虫を嚙み潰したような顔だ。


「致し方ありません。さきほども話したように、この3名が現在はイブール王国政府になっていますから。もし、嫌でしたら、クーデター軍に降伏なさっては?」

 私は嫌味で返した。


「そんな最悪な選択肢をとることはできないだろう? 人形になるつもりはない。政敵と手を組んでもやるしかあるまい」


 さきほど、私よりも上の宰相臨時代理になれるものはいないことが確定した。大臣も首都の総督もみんな捕まってしまったから。


 元老院の議員も数人は、難を逃れているみたいだけど、保身を優先しているのかどこかに逃亡しているみたいね。


 ここにいる3人が、イブール王国臨時国王と宰相臨時代理、元老院仮議長となるわ。


「すでに、バルセロク大主教様には、こちらに来ていただくことになっています。神前での宣誓をおこない、臨時政府を発足させましょう。軍事力で政権を奪ったクーデター軍よりも正当性は明らかにこちらにある」


「さすがの手際の良さだな。政敵としては恐ろしいくらいだよ。だが、問題は軍事力だ。クーデター軍は、王国最強の精鋭部隊。こちらはバルセロク地方兵団くらいしか動かせないだろう? 戦力差は明らかだ。指揮官はこちらの方が優秀かもしれないがね」


 地方兵団は、引き続きシッド少将が務めてくれている。そこに、アレン率いるファントムも加わる。戦力差をふたりの優秀な指揮官と、国を取り戻すという正当性でカバーしなくてはいけない。


「どちらにしろ、降伏しても、クーデター軍は我らを許さないでしょう。自由の象徴であるバルセロク地方は徹底的に破壊される。ならば、全力で抵抗するしかないでしょう」


 クーデター軍の狙いは、保守派の復興。支持率を急激に上げている自由党のことを潰したいはず。ならば、全力でバルセロク地方を潰しに来る。


『バルセロク教会大主教様がいらっしゃいました』


 ついに来てくれたわね。これで私たちの臨時政府は正式に発足する。


 ※


「それでは次にルーナ様、お願いします」

 私は、大主教様に呼ばれて、前に立つ。


「私の言葉をそのまま続けてくださいね」

「わかりました」


「私は、イブール王国宰相としてここに誓います」


「私は、イブール王国宰相としてここに誓います」


 ついに、はじまってしまった。


「宰相としてすべての責務を忠実に果たし」


「宰相としてすべての責務を忠実に果たし」


 まさか、私がこんな立場になるなんて……


「いかなる場合でも、王国と国民を守り」

「いかなる場合でも、王国と国民を守り」


「神聖なるわが祖国をより繫栄へと導くことを」

「神聖なるわが祖国をより繫栄へと導くことを」

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