第139話 祝杯
教師の最終面接での、不合格者は0。これですべてが整ったわ。レオは劇薬だけど、間違いなく教育界に変化をもたらしてくれる。私の願いは、形だけを作るわけじゃない。
学校という箱ものを作るのは理想を叶えるため。学校を作るのは、通過点に過ぎない。それで満足はできないのよ。
私の理想は、バルセロク地方全土に教育を行き届かせて、誰もがチャンスを――可能性をつかめる理想郷を作ること。そして、数年後、いや数十年後にこの地方から巣立った若者たちが、この故郷をさらによくしてくれるように理想を繋いでいくこと。
この地方で発生した教育改革が、国を変える基礎となる。
子供たちがしっかり勉強して、先人の作った知識を継承して、成長してそれを発展させる。その連鎖が進歩になるもの。子供たちがしっかり教育を受けられる環境が幸福の連鎖を作り出すのよ。
だから、私たちの幸せにつながる鎖を作り始めた段階よ。あとは、しっかり後ろにつなげていく。
私は、感情を落ち着かせて目を開いた。
目の前には美味しそうな料理が並んでいた。
秘書課長たちが、庁舎の食堂で宴会の準備をしてくれていた。
「知事、予約していたレストランから美味しい料理が届きましたよ」
「ありがとう。私も準備を手伝うわ」
採用が決定した教師の人たちの歓迎会準備よ。そして、海賊騒動から議会、そして採用試験準備のために忙しく働いてくれた職員の人たちの慰労会でもある。
鍋には、私が作った「ソパ・デ・アホ」がたくさん詰まっていた。
ソパ・デ・アホとは、羊飼い発祥のスープよ。村にいた時に教えてもらった得意料理の一つ。
卵とニンニク、バゲットパンが入った元気が出るスープ。卵は高級品だから、村ののひとたち分けてもらったの。
レストランから買ってきた料理も並ぶ。
シーフードの
ロヨラ副知事のワインコレクションの中でも、特に美味しいものも提供してもらったわ。
食堂には、私たちをずっと支えてきてくれた庁舎の職員の人たちが続々と集まってくる。ロヨラ・クリス両副知事もやってきた。
私の横には、アレンも一緒だ。カレン議長も招待しているので、もうすぐ来てくれるだろう。
ルーゴとレオを筆頭に、料理を楽しみにしながら新任の教師さんたちが座っている。
最高の仲間がそろったわ。王都にも仲間はたくさんいる。すでに、歴史の激動の中に私たちはいる。でも、この仲間たちに囲まれているおかげで、負ける気がしない。
私たちは、ゆっくりと満たされたワイングラスを鳴らした。
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