第126話 承認へ
私たちは、保守党の議決ボイコットを利用して一気に法案可決に動いたわ。私と副知事、そして、アレンまで動いてくれて少数派の議員さんたちを説得に回る。勝ち馬に乗ることができる。つまり、そのまま議員としての実績に繋がるわ。こんな美味しい話はないはず。
案の定、最初は渋っていた議員も手の平を返したかのように仲間に加わった。あとは、彼女だけね。
カレン副議長。バルセロク地方党の代表であり、地方議会の重鎮。保守党の議員が議決を欠席することとなった以上、彼女を味方にできれば勝利はほぼ確実……
※
「単刀直入に言います。私はあなたたちに協力することはできない。政治は一度敗北すれば影響力を失いますから」
「いい、ルーナ知事? この世界では裏切りなんてよくあること。対立する陣営、どちらにもいい顔をしておいて与えられるエサの大きい方になびくなんてよく聞く話よ。戦勝会で勝利の美酒を飲み、そのまま残念会に出るくらいの
「もし、私を味方にしたければ、あなたたちだけで保守党を切り崩して見せなさい。この世界は実績が一番大事だからね。そうすれば味方になってあげるわ」
※
「あら、数日前に比べて、さらに政治家の顔になりましたね、ルーナ知事?」
彼女は、この前と同じレストランでワインを飲んでいた。
「ええ、カレン副議長のおかげですわ」
私はワインをいただく。ホタテ貝のバターステーキも運ばれてきた。これをつまみに女同士の話をすることになるわ。
「話は聞きましたよ。保守党幹部と密約をかわしたと?」
「はい。これで過半数のボーダーは下がります。カレン副議長が味方になってくだされば、間違いなく可決できます」
「ふふ、すごいわね。そういう政治的な動き方もできるんだ」
「答えをお聞かせください、副議長」
「ええ、可決できるなら味方をする約束だもの……でも、あなたの今後は厳しくなるわ。議会多数党とあなたは対立していることが決定的になる。あの法案を通すためにあなたは政治家としての将来を失う可能性がある。どうするつもり?」
「アドリアン幹事だけに利益を与えるつもりはありませんよ。政治の世界は、お互いに利益を得ることが大事。彼はそう言っていましたからね」
「あら、彼を出し抜くつもりなの?」
「ええ、要は私が議会と対立しなければいいんですよ?」
「まさか……」
「そのまさかです、議会を再編させましょう」
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