第127話 政治家としてのルーナ=グレイシア
―バルセロク地方議会当日―
ついに始まった議会の当日。議会は知事の所信表明演説からはじまるわ。
「先日の海賊騒動で、私たちは多くの血を流しました。彼らのためにもここで私たちが止まるわけにはいきません。中央からも復興特別予算は承認されました。この貴重な血税を私たちは新しいバルセロク地方を作るために使わねばなりません」
議会からはヤジが飛ぶ。それと同数の拍手も……
「この度の議会の柱は3本です。復興予算の分配、海賊騒動で判明した港湾利権腐敗問題の改革。そして、地方の底力を向上させる教育改革。議会の皆様には、この3本の議題を中心に、よりよい地方を作るために議論していただきたいと考えております。以上、これが新知事としての私の所信表明です」
そして、復興特別予算の分配についての議論はスムーズに終わったわ。復興と犠牲者への財政援助を中心に、今後のための海岸防衛線の強化案や医療体制の充実化だから反対も難しいはずだけどね。
満場一致で予算配分は可決された。議会は次の議題に移る。
そう、港湾改革ね。
ロヨラ副知事が骨子については登壇して説明を始めた。さすがに場慣れしているわ。
「港湾改革の骨子は以下の3点であります。不正にかかわった港湾公社職員の処罰と採用方法の一新。不当な行為を行っていた港湾関連企業への許可取り消し。及び再発防止のために、港湾公社へ捜査権を付与する条例の制定であります」
これで完全に港湾利権を失う保守党は、やはりおもしろくない様子ね。
「それでは審議に入ります」
カレン副議長が、臨時議長に就任して議事を進めている。
「議長!」
アドリアン幹事が大きな声で異議を唱えた。
「アドリアン幹事の発言を許します。登壇してください」
「はい」
アドリアンは、芝居がかった様子で登壇した。
「単刀直入に言いましょう。ルーナ知事、ロヨラ副知事が推し進める港湾改革は権力の横暴です。地方庁がここまで私企業の命運を握るような前例を作ってしまえば、のちの災いとなるでしょう。いきすぎた行政の介入は、経済の発展の妨げにしかなりません。ルーナ知事に賛成できない企業に対しての報復攻撃としての側面がある本改革には賛同できるでしょうか。これは、知事選で争ったルーナ=グレイシア陣営とエル=コルテス陣営の代理戦争に地方庁が巻き込まれているにすぎないのです。我々はそのような私的な審議に加わることはできません。よって、我々は抗議の意味を込めてここからの審議を拒否します!」
保守党陣営からは大きな拍手がまき起きた。
彼が退場すると、それに同調する保守党議員の一部が退場していく。
さぁ、はじまったわね。
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