第116話 王子と子爵
―元老院院内幹事室―
「殿下、ただいま戻りました」
私の将来の義父になる子爵が来てくれた。
「お疲れ様です。子爵。それで海賊の財宝は……」
「もちろん
「さすがは子爵だ。ルーナも悔しがっていたでしょう?」
「はい。『あなたはその程度の器よ。自分が
「ふん。あの女は中央にいた時から生意気でしたからな。常に平民のための目線を持てなど甘い言葉を……」
「そんなことを考えていたら覇道など進めるわけがない。我々は選ばれた者ですからな」
「やはり、カインズ子爵は優秀だ。あなたのようなひとが私の父親になってくれて本当に心強いです」
「ふふ、私もすべての闇ルートを処分できましたから。これでやっと身綺麗な立場になれました」
ワインを開けて乾杯する。勝利の美酒だ。
「元部下たちには資金の一部を渡してあります。口止め料ですね」
「もし子爵を裏切るようなら、家族もろとも処分してしまうんでしょ? 他に裏切り者が出ないように……」
「ええ、もちろんですよ」
「しかし、海賊団はどうしますか? あいつらは一番裏切る可能性が高いでしょ」
「ああ、その辺は大丈夫ですよ。やつらは犯罪者集団で、証言には信ぴょう性がない。さらに、グラン船長以外は黒幕が誰だったか知りません。それに、船長はもうこの世にいないはずですよ」
「ほう?」
「留置所の職員にも子飼いの部下がいるんですよ? 今までの不正の証拠はこちらが握っているからなんでも言うことを利かせることができる。グラン船長は今夜、留置所で死にます。自殺を
「なら、安全だ。次回の軍務省の人事は、楽しみにしていてください」
「それはありがたいな」
子爵の獲得した資金を使って、軍務省人事には介入する。来年は軍務省の次期次官ポストである軍務省
そして、俺もこの
政府の重要なポストは、こちらの派閥がいつの間にか独占し最終的には叔父上――政府の最高位・宰相すらも"排除"する。
覇道とはそういうものなのだからな。
ワインを一気に飲み干しグラスをゆっくりと机に置いた。
もう一つのグラスのワインはわずかに揺れながら俺を見つめていた。
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