第85話 幹部会議
会議室にはバルセロク地方の課長級以上の幹部が集まっていた。
みんな難しそうな顔をしている。
「それでは会議を開始しましょう。まずは、知事が考える優先目標をお聞かせください」
司会役の総務部長に
「私が考える優先目標は、3つあります。最も優先するべきことは、教育の普及です。我が国は列強諸国と比べて識字率の面で大きなハンデがあります。教育が普及すれば、産業の発展に大きなチャンスがやってきます。そうすれば、地方は
ベテランの男の人が手を挙げる。
「知事。教育部長をつとめるエイフマンです。担当部門の長として、とても魅力的な提案だと思います。しかし、教育を充実するにはお金がかかる。教師を新しく雇う必要もありますし、校舎も必要になる。そこはどうでしょうか?」
「はい、エイフマン部長の言うとおりだと思います。将来的には立派な学び舎を整備するのが理想でしょうね。でも、それは現実的ではない。だから、形にこだわらないことにしましょう。子どもたちが勉強し将来の可能性を手に入れることが最優先です。既存の建物をうまく利用しましょう。教会や庁舎の空いている部屋、村の大きな空き家。なんでもいいんです。教師と生徒がいるなら、外だっていい。学ぶことはどこだってできますから」
「なるほど。教師の確保を優先しそこに予算を集中させるわけですね」
「その通りです。そうすれば、理想を叶えることは容易になります」
拍手が起きる。よかった、この提案は受け入れてもらえたわね。
「次は、海運業です。ここがバルセロク地方の生命線です。ロヨラ前知事も海運業改革を志向しておられました。私もそこを引き継ぐ予定です」
ここは前知事からも要望されていたところ。
※
「まず、バルセロクの最大の問題は治安だ。ここは港町を中心に発展してきた地方だからね。荒くれ者も一定数いる。だが、本質はそこじゃない。治安悪化の最大の要因は格差と労働環境だ。これを是正にしなくては根本的な解決にはならない」
「格差と労働環境ですか。たしかに貧困は心の余裕をなくしますよね。労働環境とは?」
「実はエル=コルテス議長関連の海運会社がかなり無理な条件で労働者を酷使しているらしい。それを是正にするには彼が死んだ今がチャンスだ」
※
「お言葉ですが、私はその意見に反対です!」
体の大きな中年男性が私の意見に異を唱えて叫んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます