第86話 保守的幹部
「(彼は……)」
私に反対意見を叫んでいる幹部の名前を秘書課長に問いかける。
「(彼は、ドン・キホーテ港湾部長です。港湾畑の
「(もしかして、コルテス家とも関係が深いんですか?)」
「(彼は、あちらに気に入れられてあの地位を確保しました)」
やはりそうね。つまり、私の政敵の息がかかっている男。抵抗勢力としてはなかなか厄介な相手。
「いいですか、知事。あなたは港湾行政については詳しくないはずです。たしかに、港湾労働者が治安を悪化させたりしている面はあります。しかし、彼らが居なければバルセロクだけじゃなく、イブール王国すべてに問題が発生するのです。いいですか、改革と聞けば聞こえはいいかもしれません。前・知事もおっしゃっていましたがこの改革にはリスクが伴います。海運業を潰せば地方は終わってしまうんですよ?」
正論を並べているわね。でも、本音は自分の
「わかっています。しかし、海運業の違法な操業を認めることは行政としてはできないでしょう?」
「なにをもって違法と言うかです。公共の福祉のために、
「それは問題発言です。私たちは法を守ってもらうことが大前提ですよ、港湾部長? そのあなたが例外を認めろなんて言ってはいけないはずです」
「きれいごとですね。この地方の税収の3割は港湾関係から入っています。それを敵に回してしまえばあなたは終わりです。きれいごとや理想だけでは政治はできない。青すぎますな」
随分と言ってくれるわね、この男は……
「ですが、理想や情熱がなければ人は動かない。それを忘れてしまった時、人間としては終わってしまう。そうは思いませんか?」
これが私からの最後通告。
「思いませんね。何をするにしても金は必要です。自分から財布を捨てるバカがいますか? 知事の目指す改革はそういうことです」
私をバカにするように笑う彼。どうやら無理のようね。なら、私も切り札を抜くしかない。
仕方がないわよね。初日からこんな強硬手段を使いたくなかったんだけどね。
「わかりました。ならば、致し方ありません」
「ようやくわかってくれましたね」
「はい、わかりました。もうあなたとはやっていけませんね」
「はぁ?」
「ドン・キホーテ港湾部長、あなたを
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