第51話 会見

 数日後。

 私たちは新聞の記者さんを集めて会見を開いたわ。


 数十人の記者さんたちが着席して私たちを待っている。

 緊張するわね。


「それではみなさん、お待たせしました。バルセロク地方の知事候補・ルーナ=グレイシア登場です」


 本屋さんが司会をしてくれて私たちは会見を始める。

 私は簡単な自己紹介をおこなったわ。


 そして、双方向の受け答えに移る。


 質問のトップバッターは女性の記者だった。


「バルセロク新聞です。ルーナ候補は、基本的に教育改革を柱に選挙活動をおこなうとのことでしたが具体的なお話を聞かせていただけませんか?」


 まずは様子見ね。とても答えやすい問題だわ。


「まず、平民の方々が学べる教育の場を増やすことが急務です。現在の我が国の識字率は、大陸の大国の中でも下位です。このまま、なにもしなければ列強国との差は離れていくばかりで、国の抜本的な成長ができなくなると考えていますわ」


「教育と国力の増強にどんな相関関係があるんでしょうか?」


「教育はすべての基礎です。何も芽がないところからは花は生えてきません。教育はすべての種子なんですよ。技術革新、農業の生産力アップ、災害への備え。すべては字が読めないことにははじまりません。国中の国民が文字を読めて、計算ができる。それが理想です。その理想郷の中から歴史を作る新しい発見やアイディアは生まれてくるんです」


「しかし、平民ひとりひとりに字を教えるよりも、貴族たちのようなエリートに集中して勉強を教えた方が効率的ではありませんか? 無理に農家の子供に勉学を教えても村の労働力が減って農地が荒れる心配はありませんか?」


「たしかに効率で言えばそちらのほうがいいかもしれません。しかし、それでは社会の構造が硬直してしまうのです。国を強くするには新しいアイディアが必要です。現在の体制を維持することだけに集中してしまっては新しいことが生まれずに他国に後れを取るんです。そうすれば、すべての国民が不幸になります。教育とは投資です。将来への投資がなければ、将来の発展はありません」


「ありがとうございます。とても素晴らしいお考えだと思います」

 彼女は笑いながら納得した感じになった。

 よかった。うまくいったわね。


 最初で雰囲気を作れれば、あとはうまくいくはず。

 私も少し安心したんだけど、次の相手は予想外の人物だった。


「では、私からもいいかな?」

 その男に見覚えはあった。


 私の最大のライバルであり、対抗馬のエル=コルテスその人だったから……

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