第35話 自由党決党
「自由党?」
私は思わず言葉を繰り返してしまう。
「ああ、保守党に対抗するための党だ。マルコ革命は知っているだろう?」
「はい、200年前に起きた議会派と王党派の対立ですよね。絶対王政に不満をためた貴族と失脚した王族たちが協力し、国王陛下に反旗をひるがえした事件。当時の強権的な国王陛下が処刑されて、議会派が大きな力を持ち、元老院の権力が強化され、王権から立法権が独立した。また、行政の事実上のトップである宰相も、議会が推薦できるようになった革命です」
「正解だ。その結果、王族も議会の危険性を肌で感じてみずからの議席を確保し保守党を結党した。それに反発した議会派も国民党や庶民党を結党した。しかし、保守党の切り崩し工作でどれも保守党の対抗馬には成り得ていない。私は、政界再編を目指すために知事選に立候補した。ここを改革の拠点にしたいんだ」
「少数党をまとめあげて保守党の対抗馬にするんですね。そして、本当の意味での議会を作り出す」
「そうだ、それが私の長年の夢だ。それを叶えるために老人になってしまったがね。だが、これでキミという共犯者を得ることができた。これなら夢を継いでもらえる人ができたんだからね」
「えっ!?」
「ルーナ殿。まずはふたりで夢を始めよう。いや、ここにいるふたりが賛同してくれるなら4人だが……」
「もちろんです。あなたがたふたりについていきます」
「私もルーナ殿の最初の共犯者だからね。参加しないわけがない」
ふたりも同意を示した。
これはもう逃げることもできないわね。
「わかりました。やりましょう。この国をもっとよくするために……」
私たちは、ワインをグラスに注いだ。これが結党の儀式ね。
赤ワインは血をイメージしているの。つまり、この乾杯が血の盟約ということね。
決して裏切ることがない血を分けた仲間たち。
「ちなみにですが、私の後ろ盾もたぶん、私たちの仲間です。だから、ここには5人いますよ」
私はもう一つのグラスにワインを満たした。これはアレン様の分ね。
ここから未来、私たちは巨大な敵と戦わなくてはいけないわ。今までの慣習や差別、そして、最強の政治家であるクルム第一王子。
強敵だらけだけ大丈夫よ。
私はすべて失った状態からアレン様に助けてもらって、村の人たち、そしてこの3人。どんどん仲間が増えていくわ。
だから、大丈夫。私一人では絶対に勝てないけど、皆の力を借りればなんとかなるはず。
「ガラスの天井を破る時はもうすぐだ」
閣下はそう笑った。
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