第5話 新生活はじまる。これって本当にスローライフ?(末尾に主要人物紹介)
傷も治って、私の村での生活も始まる。不安でいっぱいよ。基本的な家事は、一応学校で習ったけど、実際にやるの初めて。
村長さんから、
つい最近まで住んでいたので、基本的な家具はそろっているし、少し掃除すれば、住めるようになるわ。
ああ、どうやって火を起こせばいいのかしら。
アレン様から、最低限の生活費と食料を用意してもらっていたけど、それも大事に使わなくてはいけない。
「よく、王都では田舎でスローライフがしたいとか、
正直に言って、物価の相場とか全然わからないから、誰かに助けてもらわないと生きていけないわ。友達が欲しい。
とにかく、畑に行ってみましょう。前に住んでいたおばあさんが、使っていた農具を自由に使っていいということだから、なんとか自分が食べるものくらい作れるようにならないと!
※
「これでいいのかしら?」
私は、おばあさんの畑を見よう見まねで
うう、農家の皆さんは、いつもこんな大変なことをしていたの?
「これがみんなの憧れのスローライフの現実なのね。貴族が簡単にできると思うほど、この暮らしは甘くないわ」
こんな大変なことを毎日する農家さんはすごすぎるわ。
「ええと、村長さんが言うには、イモを育てるのが初心者向きらしいわね。種芋ってやつを譲ってもらったんだけど、どうやって植えればいいのかしら?」
私は貰ったイモをそのまま地面に植える。
「これでいいのよね?」
見よう見まねで怖すぎる。誰かに教えてもらいたいけど、友達もいない。
ひとりってこんなに心細いんだ……知らなかった。
だって、帰れば、執事さんやメイドさんはたくさんいたし、学園の友達もいたわ。
なのに、今は、私だけ。
※
「妹が……いや、あなたは王子の婚約者ではなくなったから、もう
「笑っていなさい。あなたは生きているんだ」
「いいかい、心までは腐らせちゃいけない。しっかり食べて、しっかり生きるんだ。そうすることしか、人間は過去には打ち勝てないんだからね」
※
助けてくれたアレン様や村長さんとの会話を思い出して、私は頭を振った。
だめよ、ネガティブになったら、ドンドン闇に落ちてしまう。悲しい世界だけど、救いだってあるんだから。
アレン様や村長さんの顔を思い浮かべる。こんな私のことを助けてくれる優しい人たちもいる。私だけが不幸なわけがないわ。火山の噴火で家族を失ったのは私だけじゃないもの。
私だけが悲劇のヒロインになったところで、お父様たちに顔向けできないもの。
幸せになって、いつも笑っていなくちゃ、皆が安心できない。
でも、さすがにこのままじゃ、ちゃんとイモを育てられる気がしないわ。
そう言えば、村長さんが、あの家のご近所さんは家族4人だと言っていたわね。勇気を出して、イモの育て方を教えてもらおうかな?
絶対にその方がいいわ。私一人でやって、貴重な種芋が全滅したら、それこそ
私は勇気をもって、ご近所さんを頼ろうと家に戻ろうとすると、急に女の子の声がしたわ。
「お姉ちゃん、ダメだよ! そんなんじゃ!! イモが泣いちゃうよ~」
―――――
(主要人物)
ルーナ=グレイシア(伯爵令嬢→平民)
主人公。20歳。婚約者であったクルム王子の策略で、冤罪を押し付けられて失脚し、平民になる。騎士のアレン=グレイシアに助けられて、彼の領地の村にかくまわれる。
伯爵家は、裕福で、その財力を使って権勢を誇っていたが、火山噴火と王子の策略で没落。一人娘として大事に育てられてきたため、世間知らずなところもあるが、温厚で人望は厚い。
アレン=グレイシア(騎士)
クルム王子の側近で、優秀な騎士。25歳。田舎貴族の次男として生まれたが、実力で王子の側近まで成り上がった優秀な男。主君の婚約者だったルーナに人知れず恋をしていた。真面目で誠実な性格で、策略家の王子とはバランスが取れた主従関係を保っている。
次期、騎士団長最有力候補で、実直なイケメンなので、社交界でも人気がある。だが、恋愛関係においては不器用。
クルム=イブール(第1王子)
イブール王国第1王子で、ルーナの元婚約者。20歳。妾の子として生まれて、権力基盤が弱いものの、その天性の政治力で、後継者レース最有力候補。ルーナの実家の財力を有効活用し、元老院内でも権力を固め、宰相代理に最年少で就任した。
冷徹な策略家で、人を道具としか思っていない。
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