第7話

ハヤトといちゃいちゃしまくったベッドは、ハヤトが購入した家のベッドだった。

独りで死ぬ用に購入したマンションの一室らしい。

まだ若いのに独り身を選択したとか、愛を感じた。


「二人だと狭く感じる」


「俺は狭いとこ好きだから、あそこが良い」


「だが、ベッドは買い直そう」


「勿体ないって」


「エイジの足がはみ出ている」


「うどの大木でごめん」


久しぶりにふたりで冒険者稼業をしていた合間に、これからのことを相談していた。

話題は家のことだ。

ハヤトは引っ越したいみたいだけど、俺は景色も良いし市場も近いので気に入ってる。


十年、時を超えて駆けてしまった俺たち。

俺は何も変わってないが、ハヤトは大分変っていた。

なんとソロでSSランクになっていたのだ。

しかも魔の神に敗北したと思ってたら相討ちしてたらしい。

国の、世界の英雄になっていた。

ハヤトはそんな名誉を当然辞退して、自分で開発した認識魔法で騒がれないよう調節していた。

ハヤトは俺と一緒にひっそり生きたいんだって、言ってくれた。

俺もそれが良いって思った。

俺を失った十年分、ハヤトを甘やかしたい。

それには他者が邪魔だ。

つーか、俺のしゅぱだりハヤトは俺のもの。


いちゃいちゃ、チュッチュッしまくりたい。

おうち帰りたい。

そうなると狭い家で良いって思う。

距離近いし。


…。


でも、ベッドが狭いのはあれかー。

俺がはみ出てるのは本当だし。

優雅にいちゃちゅきたい…。


「俺は、大きなエイジが大好きだぞ」


「…ハヤトしゅきー」


そんなことを言われたら嬉しいだけなので、がばっとハヤトを抱き締める。

どう考えても俺が襲ってる側だ。

でも、こんなのすぐに攻守逆転する。

十年前のままなやりとりに、ハヤトが嬉しそうに目を細めてくれた。


今現在、ハヤトは若返りの薬も作るって息を巻いている。

実際作れないことはなく、寧ろ魔法でどうにか出来そうな…って言っている。

そしたらハヤトの成長過程全部に抱いて頂きたい。

俺としては今の年上ハヤト大好きだ。


「ん?どうしたんだエイジ」


「…ハヤト、しゅきー」


なんだ、どうした。

困ったを装って、俺のスパダリが嬉しそう。


あの日、俺は、もの凄く良い物をようやく得たのだろう。

でも。

このひとより良い物なんて、ない。

英雄になんてなれなくて結構だ。

ハヤトが笑ってくれてる。

それだけで、俺は、十分、幸せなんだ。


「なぁ、精霊さんからなんか貰ったんだけどさ、ハヤトにあげる」


「…エイジ…」

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