第2話

 夜。

 鬼は眠っていた。

 身体は鎖で雁字搦めにされ、全身に大火傷を負い、肌が引き攣ったように痛んだ。


 そのまま手当てもされずに遺跡の奥にある石牢のような部屋に閉じ込められていた。


 それでも、鬼は生きていた。持ち前の生命力で生きながらえていた。そしてただひたすらに眠っていた。


 鬼は知っていた。眠りは傷を癒すことを。深い眠りはそれだけで生命力を高めてくれることを。


 だから、鬼はただ貪るように眠りを求めた。


 だが、鬼は眼を覚ます。


 においがしたのだ。とてもいいにおいが。


 昨日はそれを追っていくと少女がいた。美味そうな少女。喰らおうとしたが、できなかった。生きているのに――生きてないと、自分は贄だと言った少女。


 鬼はゆっくりと眼をひらいた。

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