草原
また夜がきた
まわりには灯りもない
草の上で仰向けになり
ずっと空をみていた
時々なにかの気配はするがとても静かだ
「少し休んであの山めざそう」
今は輪郭しかわからないあの山を
時折通り過ぎる雲は星明かりに照らされる
あたたかい陽射しで目が覚める
少し休むつもりが夜が明けていた
夜には見えなかった緑が見える
豆君は寝転んだまま昨晩の輪郭だけだった山を探す
お日さまが昇ってきた方角にその山はそびえ立っていた
山の岩肌が見える
頂きには雪
「高い山だな。」
豆君は立ち上がる
「まず麓まで行くか。」
燃えカスのような体でまだ歩く
白っぽい体は少し欠けていた
体に触れるとポロポロと何かが落ちる
地面に落ちたそのカスに触れる
拾い上げることもできない粉のようなもの
「土に還るんだな」
愛おしいそのカス達に別れを告げる
山の麓を目指して歩く
草原の風に体が削られるような感覚に襲われる
手で体に触れ存在することを確かめる
触れると擦り切れていきそうで
崩れないように体に触れる
優しく触れてもポロポロと白い粉
山の麓に辿り着く頃
この体はあるのだろうか
体が皆崩れ落ちて粉になったらどんな気分だろう
そして体に触れないようにして歩いた
太陽は段々と高くなり
笑っているようだ
「なにを笑ってるんだ?」
太陽に向かって叫ぶ
太陽は応えない
「なんで返事しないんだ」
太陽にまた話かける
それでも太陽は応えない
「おまえはしゃべれないんだな」
太陽に向かって言う
太陽はなにも応えない
豆君は立ち止まり
太陽をじっと見つめ
そして自分の体を見る
また歩き出す
黙々と歩いていく
時折太陽を見つめながら
山の麓を目指して
豆君 千 @sennouta
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