第14話 救援

「クッ」


 私はこのヤミノヌシというモンスターに苦戦を強いられていた。


 身長などは私達人間とほぼ変わらないが、闇属性魔法を操ることができる厄介な相手だ。

 しかしそれだけではない。

 通常のヤミノヌシとは比べ物にならない程の圧倒的魔力、それを動力源として放たれるヤミノヌシが使えるとは思えない魔法が原因である。


「自動車を吹き飛ばす程の風、踏ん張らなきゃ、こっちまで飛ばされる」


 闇だけじゃなく、風まで扱えるのだ。しかもとびきり強力な魔法だ。

 魔力で筋力が強化されてはいるものの、気を抜けばすぐに吹き飛ばされる。


「ッ⁉︎」


 すると、ヤミノヌシは手をかざし魔法を発動する。

 【ダークボール】、低威力な闇属性魔法だ。しかし、


「なっ⁉︎」


 マシンガンの如く、魔法を連射しだした。

 低威力な魔法でも、あんなに早く連写なんてできない。


 私は放たれた魔法を刀で斬る。

 だがしかし、魔力を消費し過ぎた為、あの連射速度に間に合わない。

 セイヴァーの身体能力の高さは、体内にある魔力の量に比例する。

 つまり今の私は、普通の人よりも少し動ける程度にしか身体能力が向上していない。


「ウッ、アッ⁉︎」


 弾ききれなかった分を体で受ける。

 人の体を貫通する程の威力はないものの、何発も受けるのはとても痛い。


「ウッ」


 あまりの痛さで地面に膝をつく。

 ヤミノヌシが近づいてくるが、痛みで動けない。


「……」


 ヤミノヌシは私の前に立つと、手をかざす。

 魔法で殺す気なのだろう。


 こ、ここまでなの? けど、時間は稼げた。隼人君達は、もうとっくに逃げた筈だ。これで私の役目は。後は、これから来る人達に、託す。


 ヤミノヌシが手に魔力を集中させる中、私は覚悟を決め、目を閉じる。


「じゃあね、隼人君」


 そう私が戦うのを諦めた時だった。


「奈々ー!」


 私の背後から、声が聞こえた。聞き覚えのある、私の好きな声だ。


「え?」


 振り返ると、そこには隼人君と水音ちゃんがいた。

 こちらに向かって駆けてきている。


「な、なんで」


 するとヤミノヌシは魔法を放つ対象を隼人君に変える。


「ッ⁉︎ 2人とも、逃げて!」


 私は叫ぶ。しかし、


「水音、離れてろ!」


 隼人君は逃げようとせずに、真っ直ぐこちらに向かって走り続ける。


「や、やめて!」


 ヤミノヌシは隼人君に向かって【ダークボール】を連射する。


「クッ」


 魔法は隼人君に衝突すると同時に爆発する。

 さらにその爆発で土煙が舞う。

 だが、


「ウォォォォォォォ!」


 煙の中から、腕で体をかばいながら、雄叫びを上げながら隼人君は出てきた。


 耐えたんだ。


 隼人君は拳を握りしめ、私の真横に立つ。そして、


「奈々に、近づくな、このクソ野郎!」


 ヤミノヌシの顔面を思いっきり殴りつけた。

 ヤミノヌシは殴られたがすぐに体制を立て直し、後ろに下がる。


「大丈夫か? 奈々?」


 隼人君は私を心配する。


「なんで」


「ん?」


「なんで来たの?」


 私は怒っていた。また彼は、危険な場所に来たしまったからだ。


「力の無い役立たずで足手まといな隼人君には、何も。それに、またその身勝手な行動で」


「……何言ってんだよ」


「え?」


「じゃあ今、俺がこんな行動を起こさなかったら、お前どうなってた⁉︎」


「そ、それは」


「いいか、それが身勝手な行動だと決めつけるのは、後でいい。これは俺が選んだ答えだ。嫌なのは、何もせずにただ時間だけが過ぎていって、最悪な結末になる事だ!」


「は、隼人君」


「分かったら立てよ。やるぞ。俺だって、お前も同じ気持ちだ。誰も失いたくないし、この街も壊されたくない。だから、俺も戦う」


 真剣な眼差しで、真っ直ぐにこちらを見る隼人君の目は、本気だった。


「……分かったよ。でも、無理はしないで」


「お互い様だ。やるぞ。俺が攻撃に徹するから、奈々はサポートをしてくれ。体今ボロボロだろ。俺は奈々よりはボロボロじゃないからな」


「うん。分かったよ」


 なんでだろ。そう思う確証も、根拠も何も無いけど、今は、負ける気がしない。

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モンスターとの生活は難しい〜人間に擬態するモンスターが美少女化して俺に懐いたんだけど引き離すにはもう遅いようです〜 ザラニン @DDDwww44

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