第13話 たとえそれが身勝手だとしても
第12話を編集しました。
私は移動中、極度の罪悪感を覚えていた。
友人に、足手まとい、と言い放ってしまったからだ。
けど仕方がなかった。
そうでもしない限り、彼は無理矢理にでも付いてくるからだ。
「けど」
建物を飛び越えながら、私は呟く。
「全然足手まといなんかじゃないよ」
当然、こんな距離から彼にこの言葉が聞こえるはずはない。
だがそれでも、声に出して謝りたかった。
「大丈夫、守れればいい。隼人君を、この街を、守る事さえできれば」
建物を飛び越えていくと、ある場所が開けている事に気がついた。
私はその場所に降りる。
降り立った場の目の前に、それはいた。
長い毛で顔を覆い、黒い衣と邪悪なオーラを身に纏ったそれは、トボトボと誰もいない道路を歩いていた。
「魔法陣形成開始……発動【ブレインメッセージ】」
私は手を広げ、魔法を使った。
手の平に黄色く輝く魔法陣が形成されていき、完成すると同時に魔力を流し込む。
これは指定した人物の脳に直接連絡する魔法だ。
「街中にモンスターを発見。モンスター名【ヤミノヌシ】。場所は第9区。至急応援を要請します」
使い終えると、魔法陣は消え去る。
私は続けて魔法を使う。
「魔法陣形成……発動【マテリアライズ】」
すると魔法陣から刀の柄が伸びてくる。
それを掴み、引き抜く。
「【ソードシェイプ】!」
魔力で作り出した刀、斬れ味は普通の刀の倍、もしくはそれ以上。
だが、このような武器でもあのモンスターに太刀打ちできるとは到底思えない。
けど、やる。この命に変えても、あのモンスターから町を守る!
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力が無い。つまり足手まとい。だからついてくるな。
奈々に言われた事は、俺の心の奥に刻まれていた。
「はやと?」
水音が地面に座り込んでいる俺を呼ぶ。
「……何だよ」
「ななのところ、いかないの?」
「……行かないさ。いや、行けない。俺の身勝手な行動で、人が死ぬんだ」
「しぬ?」
「そうだ。死ぬんだ」
「でも、このままだと、なな、しんじゃう」
モンスターの危険察知で、少し分かるのか。
「俺が行ったら足手まといだ。そっちの方が」
「でも、しんじゃう」
「ああ、けど」
「奈々、死んじゃう!」
水音は大声を上げる。
「しんじゃったら、なにももどらない! もうやりなおせない!」
「み、水音?」
「それに、ななに、もうあえない!」
「ッ⁉︎」
そうだ。そうだよ。なんで行動する前から、奈々を殺す事になるって、決めつけてるんだ? まだ俺は、何もしてないだろ。むしろ、そんな尋常じゃない奴、奈々1人で太刀打ちできるのか?
俺は立ち上がる。
そうなると、自分の身勝手な行動を恐れて、何もしないで時間が経つのを待ったとしても、奈々は死ぬかもしれない。奈々にもう会えなくなるかもしれない。進んでしまった時間を元に戻す事は、できない!
それは、それだけは嫌だ!
「……水音、俺は奈々のところに行く。お前は」
「いく!」
水音はそう言うと俺の服の裾を握りしめる。
「ダメだ、お前には危険すぎる。怪我をさせたくないし、怪我もさせたくない!」
「いやだ! わたしもいく!」
今なら、奈々の気持ちが分かる。
確かに連れていきたくない。けど、こいつには俺にみたいに、後悔もさせたくない。
「……分かった。けど決して、危険な事はしないでくれ。怖くなったら逃げろ」
「にげない!」
「そうか……なら急ぐぞ!」
俺は水音の手を握りしめ、奈々の飛んでいった方に、モンスターのいる方へと向かっていった。
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