【義妹SIDE】闇市場から仕入れた治療薬の効果がなく絶望する

「……げほっ……ごほっ……ごほっ」


「……げほっ……ごほっ……げほっ」


「……お父様、苦しい苦しいですわ……肺が……肺が……げほっ……ごほっ……げほっ」


「安心しろ……リノア、闇市場で仕入れた治療薬がある。この治療薬を飲めば立ちどころに病は消えゆくはずだ……げほっ……ごほっ……げほっ」


「は、早く、その治療薬をくださいませ……お父様……げほっ……ごほっ……げほっ」


 何せ二人は王族である。膨大な資金力と、それからコネクションを持っている。故に自分達が手に入れられないものなど存在しないと本気で信じていた。


「ああ……渡すぞ。リノア。これが治療薬だ…げほっ……ごほっ……げほっ」


「ありがとうございますですわ……パパっ!げほっ……ごほっ……げほっ」


(ちっ……)


 ディアンナは表情を歪め、心の底で舌打ちをした。本当に舌打ちするとそれだけで何も言わないでも処刑されたとしても不思議ではないのだ。


 ともかく二人はあの薬師、そしてディアンナにとっては義姉であるアイリスの調薬した薬を飲むのだ。


 これではせっかく因果応報ともいえる事態になったのに、病気が治ってしまうではないか。それに問題はそれだけにとどまらない。


 喉元過ぎれば熱さを忘れ、自国の惨状など一切顧みず、帝王とリノアは自分達さえよければそれでいいの精神で、戦争を再開するかもしれなかったのだ。


だが、幸いにも。帝王とリノア王女の二人にとっては不幸にもそうはならなかったようだ。


「ごくんっ!」「はぁ……はぁ、ごくっ!」


 帝王とその娘リノアはその調合薬を飲んだ。


「こ、これで私達助かるのですよね? お父様、げほっ……ごほっ……げほっ」


「ああ……そのはずだ、リノアげほっ……ごほっ……げほっ」


 二人はしばらく変わらず咳込んでいた。


「か、変わりません、お父様、リノア苦しんです。げほっ……ごほっ……げほっ」


「ああ……な、なぜだか我も苦しいままだぞ。げほっ……ごほっ……げほっ」


 二人は変わらず苦しみのたうち回っていました。その事をディアンナは疑問に思いいます。


(なぜですの……なぜ治らないんですの?)


ディアンナは疑問に思っていた。需給の関係で治療薬は法外な値段がするが、それでも効かないという事は今までなかった。


現にディアンナも一応完治はしたのだ。だからおかしいと思った。何か異様な事態が起こっている。


ディアンナは不穏な空気を感じ取っていた。そして、それは見事に的中する事になる。

 

それからしばらくしても帝王とリノアの様態は良くはならなかったのである。


「どういう事ですの? お父様……なぜ治らないんですの?げほっ……ごほっ……げほっ」


「わ、わからん! ……治療薬は間違いなく本物のはずなのに。げほっ……ごほっ……げほっ。し、仕方ない。調べさせてみよう。なぜ我々の病が治らないのか。げほっ……ごほっ……げほっ」


こうして帝王は諜報員に情報を集めさせる。その結果、予想もしていなかった事が現実に起こっている事を知るのである。

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「嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので」 つくも/九十九弐式 @gekigannga2

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