作品を書き続ける理由、作家になりたい理由

ためらいもなく正論を告げられるあるひとに、すごいなあ。そう思った。


ただ、同時に心配だった。

このひと、刺されないかな?……と。



正々堂々と規則違反法律違反を指摘できることは大切だ。それをなんらかの肩書きある権力に頼らず、ただ良くないと思ったことを相手に伝えることができること。それは本当に誇ってほしい。個人的に強く思う。


陰口を叩くばかりで、決してそれが相手に対して伝わらない(伝わらないようにする)この人の世で、まるで純粋な幼子みたいに、真っ直ぐな心で気持ちを、意見を言える大人は今どれだけいるのだろう。



なんなら、わたしだってこの話で言うなら圧倒的に前者になってしまう。


ただ、弁解をさせてもらえるのであれば、わたしが今多い対人関係は主に子ども関係。そこにおいて、わたし個人の意見はあったとしても口外しない。

かつてしていた時もあった。前者はもちろん(胸を張れることじゃない)後者のようにしていたことだってある。


わたしは、飾らず取り繕うこともせず、真っ直ぐに言葉を吐き出せるひとを好ましく思っている。だから今こうして文章にしているのだけど。



今、わたしが生活するメインコミュニティーの中では、わたし個人としての意見であっても、そう捉えてもらえない。息子の母親としての意見としてまわりは見るので、どうしたってよく思われない話だと……批難の対象はわたしだけでなく、息子にも向かってしまう。


だからわたしは、口をつぐむことにした。強いて言えば前者というのは、こういうことである。



息子の生きていく世界のことを思うと、わたしが何気なく発した言葉が誰かの心に引っかかり、そしてそれが穴を大きくしていく。そういう事態を回避しようとする。

たぶん、わりと大半の母親はこんな心の動きを一度は経験しているんじゃないかな……。

だから、別のコミュニティー(例えば仕事、趣味などの)存在があると救われるんだろうと思ってる。実際わたしもそのひとりだ。


わたしという人間が他人とうまく生きること自体上手でも器用でもないのに、息子の世代の対人関係にまで考えを及ばすとなるともうそれは多大なプレッシャーでしかない。ときどき、この圧に負けてわたしは胃を痛める。笑


体に症状はなくても、心に現れることはしょっちゅう。やる気がなくなる、言葉が出てこなくなる。そうすると誰にも会いたくないし会話もしたくない……とか。不器用こじられすぎか。


もうお察しの方もいらっしゃると思うが、そんなわたしにとっての吐き出す場所が、このエッセイです。


だからすごくはしゃいでる時もあれば、沈んでいるときもある。読んでくださってる方には、感情の起伏の激しさに付き合わせ振り回してしまって恐縮なのですけど……。



ここに書いて吐き出すことで、自分の気持ちを確かめる。読んでくださった誰かの反応をもらって、考え方を、表現の仕方を、言葉を選び直す。ときには自分を叱咤したりして。


そういう意味では、たぶん手帳に毎日書いている日記とはまた別に、ここはすごく大切な場所でなくしたくない場所。そしてあわよくば、ここに積み重ねた感情の泥水を濾過するのが、エッセイ公募であってほしい。できたら賞を受けたいとすら願ってる。



もともと、みんなの前に立つような目立つことは苦手。でも、おかしいけど憧れだけはずっとあった。そうできるひとは、すごいなって思ってた。


できないのに憧れだけが膨れ上がって、どうにかこのカラダの内側にある感情とか見えないものを言葉にして表現したい。そしてこの世界にいる誰かに、そのひとのカラダの内側の奥底から浮き上がってくる「そうだね」がほしい。


世界中全人類が共感しあえるなんて思ってないから、本当にわずかでもいいの。そういうひとに出会いたい。


たぶん、それが理由だと思う。

だから作家になりたいのかもしれない。

見つけにいく限界があるから、もしわたしの名を知ってもらえていたなら相手に気がついてもらえるかもしれないって、思った。


すごい相手に縋ってる間強いな。笑

もちろん、自分から向かっていく姿勢はこれからも変えないでやっていくつもりです。書きながら、探す。まだ見ぬあなたを。



表だった行動は……またちょっとできない。

冒頭のあるひとみたいに、等身大のままの姿で勝負するには、わたしの意気地が無さすぎる。だから結局……広く知ってもらうための作家っていう肩書きが欲しいんだ。そうじゃなければ、今のままでわたしは満足していると思うから。


わたしの内側にあるものが正論かはわからない。あいまいなグレーの部分だってたくさんある。知られれば知られるほど、批判だって増えてくるだろうけど。でも…がんばりたいな。


いつかわたしがあるひとに感じたように、誰かに「刺されないように気をつけなよ?」って心配されるくらい(笑)、自分に内側に正直な作品を生み出せるようになりたいです。

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