1LDKの幻想
ほんと、年に1回くらいあるかないかくらいのことなんだけれど。……無性に、新婚当初住んでいたアパートに帰りたいなあって思うことがある。
別に特別な環境だったわけじゃない。
なんなら今の方が便はいいし生活するには過ごしやすいんだけれど……。1LDKの角部屋の当時の間取りというのは、なんだかとても、わたし好みだったんだなあと。今思い返すとね。
ミニマリストになりたいとか憧れがあるわけではないのだけれど、わたしは今の家よりもこじんまりと暮らしている方が好きなのかもしれない。あのときは掃除もだいたい行き届いていたけど、今はまったくだし(泣)
家の中に何があるのか。物の把握だってできてた。けど今は全然わからないお恥ずかしながら……。
まあでも、ここでの暮らしは子どものいる生活であって、向こうにいたときは大人だけの生活だったから同じにとは行かない。
これは本当に、ママ友と話してると本当に思う。
とにかく!おもちゃ!謎のおもちゃが!作った工作の品が!!ずらり!!1部屋占拠当たり前!!笑
だからこれはわたしの予想だけど、息子が家を出て行ってしまったあとは、今の家……広すぎるだろうなあと思う。買っちゃったけど、売りに出してわたしはこじんまりと暮らしたいなあ。できたら平屋で。夫の意見聞いてないけど。そんな懐の余裕もないけど。笑
あの当時のアパートで1番好きだったのが、日当たりの良いリビングに広いベランダ。
2つの大きな窓から降り注ぐ朝日を浴びながら植物に水をやって洗濯を干す。
そんな些細な生活のひとつが恋しくてたまらない。ベランダに吊るした花を見上げて、犬とたわむれながらお茶をして仕事に行って。
……ああ、そういえばあの頃、少しだけ小説を書いて過ごしていた。どこに応募することもなく、書き上げることもなく。
使っていたパソコンが壊れてしまって、別でデータ保存とかしていなかったから……多分もう明るみに出ることはない。自分の目で確認することもない。それはそれで、ちょっと物寂しい。
仕事から帰ってきて、夕食作ってお風呂に入り夫の帰りを待つ。確か毎週火曜か水曜日は帰宅が定時だったから、飲み会が多くて。そんな夜は、ひとり家で晩酌しながら踊るさんま御殿観るのが定番だったな。懐かしい。踊るさんま御殿、今やってるのかな?最近ほぼテレビ観ないからまったく近況がわからない(笑)
あのときは仕事もして家事もして創作する元気もあって、今よりも余裕があったのは若かったからなのか……?体力が落ちたのかな。あの頃のポテンシャルに戻れたらなあ。
でも、じゃあ今は?と話を戻すと、わりとすんなり落ち着く自分がいる。
息子が産まれて今のこの家に移り住んで、リアだけでなくハルも我が家の一員に加わった今の生活が嫌なのかというとそうじゃない。楽しいよとても。
ただ、ときどき。
あの頃、あの部屋の窓から見た夕陽を思い出して恋しく思う。あの部屋にもう一度入ってみたいとは思うけど、あのときの暮らしに今すぐ戻りたいのかといえば、それは少し違う気がする。
ただ間違いなく、あのときはすべてが完璧だったんだなとは、思う。わたしのすべてがあのアパートにはあった。当時は気がつかなかったけど。
もしあのとき……そのことに気がついていたら、満足していたら。我が家に息子はいなかったしハルもいなかったかもしれない。そしたらたぶん、ここにもいない。
そして今の暮らしが完璧だと思ってないけど、遠くない未来で、今と同じように昔を思い出したとき、完璧だったと思うんだろう。
不思議だね。
そんなことを、今の家でいちばん大きな窓から差し込む西日を見ていて思ったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます