カエルとのおもいで
書きたいことが山のようにあるのに、まだ精査が至らない。日々生き抜くこと、育てることが精一杯。
なのでとりあえず、創作のことから。
子どもたちに聞かせたい創作童話の公募に応募予定のアイデアを考えていて、作品モチーフに選んだのはカエル。
カエルと、あと何を掛け合わせようかなあ。
そんなことを考えながら、ピーチティーをごくり。もう少し甘くないものが飲みたい。パックで売っているものはどうしても少し、甘味が強い。かと言って、水出しするのは少し面倒……。
そうひとりごとをこぼしながら、イメージを膨らませるのに、カエルを描いてみる。
よくよく知っているつもりでいたけれど、描いてみると細部どころか全体のシルエットも上手く描けないことに気づいた。
絵はまず観察ができないと描けないのだから、全然わたしはカエルを知らないんだなあ……。
目の部分が少し盛り上がっていること、手と足の生え方にその曲がる方向など……人間とは違う骨格をしているが故に、動き方も見事に違う。
なかなかに大発見だった(今更感)。
カエルを調べていたら、すごいすごい。
いろんな種類がいて、いろんな特徴があるのね。単にカエルと言っても、色とか模様とか大きさ。ずいぶん様々なことに驚く。
わたしとカエルの思い出は、もう学生時代に行ったカエルの解剖実験がいちばん印象強い。
あのときの実験台になったのは、ヒキガエルだった。
先生によって持ち込まれたヒキガエルは土色をしていて、衣装ケースの中に張られた水の中にぷかぷか浮いていた。
暴れている子もいれば、臆病になって動けない子もいた。……もしかしたら、訪れるその時を予感していたのかもしれない。
手足を留めて、まな板の上の鯉化したカエルは、湿ってつやのある腹をこれでもかと無防備に晒されていて。わたしが晒されているわけでもないのに、腹がスースーした。何もされていないのに、キリキリと痛む。
カエルのそこに、わたしがこれから刃を入れるだなんて。
悍ましくて、後ろめたくて、怖くて、申し訳なくて痛くて。うまく処理も表現もできない感情を顔に浮かべながら、わたしは同じ解剖実験の班の男性陣に泣き言を言った気がする(わりと女性陣みんな男性陣に縋り付いていた)。
そのときは、班の中でも仲が良かった男の友人が先陣切ってその瞬間を引き受けてくれた。
頼もしかった。その背中を見つめるだけの自分は、本当に情けなかった。ヒキガエルにとっても、今思えば失礼な態度だったと思う。
以来、カエルに関わる機会は全くなくなった。
息子は昆虫をはじめ、小さな生物が苦手なので見かけたら教えることもある。けれど、本当にその程度。
だから、わたしとカエルの距離はつかず離れずな距離を保っている。
ではなぜ、そんなカエルをテーマにして創作することにしたのか。
仲良しのママ友親子、みーちゃん親子()とキャンプに行った夜。息子たちを寝かしつけた深夜のテントの中に、来客があった。
それが手のひらサイズの日本アマガエルだったのだ。
わたしにとってはあまり良い来客ではなかったけれど、みーちゃんにとっては素敵な来客だったようだ。
「びっくりした」
そう言いながらも、外へ逃すのにテントの中をぐるぐる回って手のひらで捕まえた。まず素手で触れることに驚かされた。
みーちゃんの息子くんは、うちの息子と違い小さな生き物が大好き。だからよく採集に行くのだそうだ。「慣れだね」と笑うみーちゃんに感服してしまう。
わたしはまたカエルに慣れたい。いや、もともとすんごい好きで仕方ない!ってわけではないんだけれど……。
それでも、カエルがモチーフのキャラクターはわりと好きだったりする。
だから、創作のモチーフに選ぶことに抵抗はさほどなかった。
選ぶことはできるけれど、そこからストーリーを膨らませられるかはわからない。なんといっても、カエルとの思い出があまり楽しいものではないのだ……。
それでも、ここでわたしはその思い出を塗り替えていきたいと思う。
自分の中で一歩前に進むために、わたしはこの童話を書くのかもしれない。
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