書くと知る

出かけ先でアイデアが浮かぶことが多い。


でもこれって案外よく聞く話。こういうときに出てくるアイデアをうま〜く取り入れていくと、思ってもいなかったプロットが出来上がったりして、おお……と感嘆の声をあげてしまう。



ちなみに今日アイデアがふと湧いたのは、愛犬とジョギング(?)をしていたときだった。

いつもならウォーキング程度のお散歩なのに、今日はコースとその距離を決めて走った。なんで走るのにビーチサンダルを履いてたんだろうって、あとから疑問に思ったけど……。


雲がだいぶ夏の面影を表していて、肌をなぞる風にもほんのわずかにその夏が紛れ込んでいた。


心地いい。


ほんとうにその言葉が似合う瞬間だった。



話は戻るが、アイデアが湧いたので慌ててスマホを取り出し、メモアプリを立ち上げる。

箇条書きでもなんでも、そのアイデアを書き留めなくては。そう思っていたのも束の間、打ち込もうとした途端、わたしとしたことが……ポカン。


「うっそ、信じられない……」


そんな震えた自分の声に慄きつつも、わたしほ呆然とした。……ええ、ど忘れしたのです。


画面の明るいスマホを片手に持ったわたしがただ棒立ちする中でも、愛犬はふんふんと鼻息立てて歩き回っていた。


なんだかなあ……。

せっかくのアイデアが湧いたのに、取りこぼしてしまった、と悲しくなる。


それもこれも、近頃ずっとこんな感じなのだ。

朝起きてお手洗いに向かうとき、洗顔をするとき、食事を作る間、息子を送った帰り道、掃除機をかけている最中……。

あらゆるタイミングで湧き出るアイデアやその破片はなぜか綺麗に霧散していってしまう。

慌てようものなら、もう思う壺(誰の?)。見事に泥沼に足を突っ込むような不快感とわだかまりを抱えることになる。


一時期、ポケットサイズのノート、トラベラーズノートを持ち歩き、すぐメモできるようにと意識して行動していたときがあった。

しかし今は心の余裕がないからなのか、はたまた何かに心せしめられる感覚が耐えられないからか、出来そうにない。

いやでも、その頃の方がネタもアイデアも宝石の山のように輝いていたっけ……。



そんな今、原稿に向かって執筆中。

ここにあのアイデアがあったなら、どんな風に作品の吹き抜ける新風があっただろうか、と思い馳せる。

でも今それはない。焦がれても、ないものはないのだ……。


ないならないで、あるもので精一杯書いていくだけだ。


そんな風に肩肘張っている。

そうここに書き出して思った。

もしかして、そう大したアイデアではないから、取りこぼしてしまったのかも……?

それか、今あるアイデアと比較し、やっぱりその方が面白いよ、と自信を得るためのものだったのかも……とか。


何事も前向きに捉えることの大切さを、そしていかにわたしが後ろ向きになりごちなのかを、書いていると実感することが多い。


きっとそれが、自分と向き合うということなのだろう。



書くと知る。

これはあながち真理なのかも知れない。

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