設定 アプラウス(数値化なし)
新世界の幕開けそれ自体は、華々しく、当初の計画通りに進んでいた。
人々の憶測や未確定事項は無視して、いまある世界の情報を端的に整理すると、地球では、神聖暦1年目に起きた事象「世界変革」の大きな変化点は3つあるとされていた。
1、魔力や魔物といったファンタジー世界が本当に実在していること。
2、地球とエメスの両世界に、とつじょあらわれた破壊不能オブジェクト「
3、知的生命体は、精神に、エネルギー情報体「アプラウス」を強制的に得たこと。
ファンタジーは妄想の産物だ、などと地球では長年に渡り
しかしながら、世界変革から10年もの歳月が経過したというのに、地球では、ファンタジー世界に対する極まった体制をいまだ整えられていなかった。
転移聖蹟は、なにも人間だけを転移させるものではなかったのだ。
尖った角を振り回す兎。全身の皮膚が爛れ悪臭を放つ動屍。蔓に纏われた老木人。
ひとつ目巨人。石器を振り回す老婆鬼。片手が肥大化した猿、等々。
これら知能の低い、迷宮産の魔物や野生の魔物が、異世界人や亜人たちと時を同じくして、たびたび地球を訪れるようになった。
影政の住まう神聖日本城国の最初の1年目は、最悪といっていいくらいに悲惨な状況下に陥っていた。
なぜならば、過去の教訓から完全な一極集中型の都市繁栄を主としていない神聖日本城国では、出現場所を特定できない珍客に、即座に対応できなかったのである。
気づいたときにはあちらこちらの地方が壊滅していた、なんて事実は、ざらに報道されていた。
具体的に、最初の1年目に、神聖日本人の人口は半減した。
これには影政も相当に驚いた。
彼はある一定の犠牲を承知してはいたのが、迷宮からの侵攻が恐ろしく早かったのだ。
その被害のほとんどが、迷宮からあふれ出た魔物の仕業で、見通しが甘かったといわざる負えない。
けれど、異世界エメスで躍進しだした迷宮の勢いを押さえ、かつ、世界意義のバランスを保つには、世界拡充が手頃だったのも事実。
影政がユルミルに提案した、この急激な生命体増による魔物被害緩和策は、現状を直視したユルミルによって、声を真っ青に異議申し立てをされた時期が頻繁にあった。
しかし、10年経ったいまでは非常に大人しい。
つまりそれは、この方策が期待以上の効果を得たと認められたからに違いない。
結果論ではあるが、かの視点に立ったとき、この方策以外にはどんな手段も有効に働かなかった、そう思わせるほどの活気が、今の世界にはあった。
すこし話は逸れるが、ユルミルが訴えた異議のひとつに、『あなたは地球を私物化している』なんていう恐ろしい言葉があり、これには影政もそうとうに思いつめ、一時期、十円禿げができたほどだった。
また、ユルミルが大人しくなった最大の理由は、世界変革を行った際の後付け方策として、彼女が両世界の「理性」ある生命体の精神に、アプラウスを強制的に贈与したことが上げられる。
但し、アプラウスは迷宮産の魔物(迷宮外で生まれたその子孫を含む)を1体、確殺しなければ顕現しないという条件つき。
これにより、うまい具合に、世界間バランスが均衡するようになった。
アプラウスとは、精神に紐付けされた取り出し不可の
実際には知覚できないそれを、神力により、一部を可視化――脳内ですべての操作・編集を行えるようにした優れもの。
アプラウスの主な機能項目として、『プロフィール、換装、装備、収納、通話・?、?・動画、地図、図鑑、?、全体掲示板、?、?、?、?、迷宮産魔物討伐ポイントランキング、転移聖蹟、業』がある。
これらに加え、秘匿された目玉もいくつかあった。
アプラウス自体が魔力の供給源。
すべての言語・すべての識字に理解を示せるようになる。
兵器と放出系統魔法のダメージ無効化。(魔刃は放出系統魔法に含まれない)
これら秘匿機能は、アプラウス保持者同士に限り有効だ。
一部制限は、地球に対するデメリットが大きい。
しかしそれは、地球がエメスの下位互換――魔素が存在しない世界である点と、世界間均衡のためと納得してもらう他ない。
肉弾戦を好む影政の意向を汲んだわけではないということだ。
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