第12話 夢の中の男の子

 夢の続きを見るように、夢で見た人物が別の夢にも繰り返し出ることがあります。

 第8話で出てきた男の子。実は、子供の頃からずっと夢に出てきた少年なのです。


 初めて彼が夢に出てきたのはいつ頃だっだだろう。小学に上がる頃、…前だったかな?

 襟足を刈り上げ、上の髪はすとんと落とした所謂いわゆる坊ちゃん刈りの男の子。色素が薄く、髪は黒というより薄茶色に近い色で肌も陶器の様な白さだった。つり目がちだけど近寄りがたいイメージは無く、むしろ親しみを覚えました。

 口角はほんのり上がっていて、目が細いこともあってかいつも笑っているように見える彼の事が私は大好きでした。

 夢の中で彼は私の親友で、いつも持前のアクティブさで私を色んな遊びに誘ってくれました。


 小学校に通うようになって、私は休み時間になると毎日校庭で友達と遊びまわりました。楽しい日々でした。

 ある時ふと、友達の中に見慣れた、でもみんなは知らないはずの男の子が混じっていることに気が付きました。夢の中の彼です。

 彼は夢と同じ顔をしているのに、私には話しかけてきません。いつも、友達の輪の中で、私と会話することなく遊び、笑っているのです。

「○○、ボール持って来ようぜ。」

 友達の一人が彼に話しかけます。

「うん、いいよ。行こう!」

 彼はさわやかに笑い、友達と駆けていきました。

(夢の中の彼は、実在したんだ…!)

 私は驚きと興奮で胸が高鳴ったのを覚えています。

 

 しかし、彼はやはり存在しなかったのです。


 ある時、友達に彼の事を尋ねると、「誰それ?違う学年の子?」という返事が返ってきたのです。

「いや、いつも遊んでたじゃん、〇〇くん。」

 私がそう言うも、友達は首をかしげます。

 その日、休み時間になっても彼は現れず、他の友達もそれが当たり前というか、初めから〇〇という人物が居なかったかのように過ごしていました。

 私は悲しかったですが、幼かったこともあってか、直ぐにそんなことも忘れて日々を過ごしていました。

 今思うと、彼と遊んだ日々はすべて夢だったのかもしれません。でも、確かに彼は居たのです。


 数年後、彼はまた何食わぬ顔で夢に登場し、私の手を引いてくれるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

記憶と夢の話 とりすけ @torisuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ