第11話 実家が苦手

 私は実家が苦手です。両親と仲が悪いという訳ではなく、家そのもの(建物)が。

 母の血の影響なのか、ただの怖がりなのか、私はたまに見えるはずのないものが見えたり聞こえたりするのです。

 それはいかにもな場所に限らず、なんて事ない昼間のちょっとした空間等にも現れます。見えても大体のものは怖く感じないのですが、何故か実家の子供部屋はいつも怖いのです。

 実家は私が小学校3年生の頃に建て直しており、比較的新しい住居でした。1話の女の子を見てから再び会うことはなく、古かった家もそんなに怖いと思っていなかったのですが…。

  建て直した後、私だけでなく母も怖い目にばかりあいました。。


 ある日の夜中、母が息苦しさで目を覚ますと着物を着た見知らぬ真っ白な老婆に乗っかられていたことがあったそうです。

 またある日は私が金縛りに連日あい、その時異様にか細い女に踏みつけられました。

 また別の日には夜中に突然太鼓の音が鳴り響き、その後お経の様なものがブツブツと聴こえたり。とにかく尋常じゃないペースで嫌な事にあうのです。

 そんな中でも父は全くそういった現象にはあわず、私たちが報告すると「気のせいに決まってる」と笑いました。羨ましい。


 ある時、私は念願の携帯電話を買ってもらいました。学生だった私はいきなりカメラ付きの携帯を買ってもらえた事が嬉しくて(当時は最先端機種)、部屋の中でその場をグルグル回りながら連写しました。


その行動が何を呼ぶか知りもせず。


 私は撮れたての写真を見るためファイルを開きます。浮かれた気分は一気に冷め、違和感で何度も写真を見直しました。

 写真には、画面の右端から結構な割合で黒くて長いものがなびいているのが写っているのです。でも真っ黒なソレは、部屋の何処を見渡してもありません。

 髪?いいえ。当時の私はショートヘアで、どう頑張っても自撮り以外では写真になど写りようがありません。

「……。」

 嫌な汗を垂らしながら私は即座に写真のデータを消し、子供部屋を出て両親の居るリビングへ急いで駆けていきました。


 今は結婚し実家を離れているのですが、たまに帰ってきても時々嫌な雰囲気を感じます。

 金縛りの時のあの女性、母に乗っかる老婆、写真に写った黒いもの、…今でもそれらの正体はわかりません。ただ言えるのは、全て悪意を感じたと言うこと。家を新しくしてはいけなかったのでしょうか…。

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