#27 二度もあれば三度もある偶々偶然とは言えないよね


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ヒュッ・・・ギュッゴ!!


突風の咆哮って言えばいいか、それは空気の圧縮が一気にコッチに雪崩れの様だった。


「?!!」


眼前に迫ったのは、巨大な鉄塊・・・それが金平糖の様な刺々しいトゲ付き鉄球だと分かった・・・・でっか!!!


「えぇええい!!」


ゴォオオオオオオオン!!


・・・・シャリーゼの張りの良い声と凄まじい衝撃波が空気の壁を破る最中に俺が脳内で第一の感想はソレ。

まるっと直系3mの無機質の凶器は流石に距離感が掴めなかった。


ギュロロロッ・・・・・


眼前で静止している、鉄球は不審な程のスクリュー回転をしたまま・・・・ガラム謹製の大盾が魔法力でおぼろげな光を宿していた。


「シャリーゼ!!」


ネイア姫がシャリーゼの背後につくと、姫の掌がシャリーゼの背中を押す。


「おまかせめさ・・・れいっ!!」


シャリーゼは一気に魔脈を活性化させる、ネイア姫の純粋な魔力を介して間接的な身体強化の副作用を促していた・・・。


(っていうか・・・どっから・・)


この手のパターンはもう飽きているんだが・・・また空気の圧迫感を覚えた。

「そこか!!」


一気に目先に入り込んだ影に剣撃を撃ち込んだ!!


ボォツ・・・・ガッキィイイイン!!


その迅さは尋常ではない。

剣撃の打ち込んだ衝撃は、衝撃と魔法の膜で重なったぶ厚い。

鈍い重い感触が手に伝わる。


「ぐおぉ?!」


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「はっ!!・・・やるねぇ・・・ディーヴァ様の御眼鏡に適う男って言うのはたしかだねぇ!!」


距離をとって奴は叫んだ、やや喉の枯れた声高な女の声・・・。

俺は耳を疑った。


「鳥・・・?人間?」


黑い髪は祭事の神官の様に、丁寧に切りそろえ。それは自身の身長より長いそれは鳥の翼や尾羽に似た機能へと転化させている、その証に髪の切っ先は鮮やかな紫色に染まっていた。衣装はそれとは異なり、全身フィットしたボディレオタード姿に猛禽類の爪さながらな足は印象深い。


「だからなんだい!!」


そう言って、突飛なく加速した。その加速度はさっきの鉄球とは比べ物にならないぐらい迅い!!


「焔閃衝!!」


深紅の槍が飛ぶ!!ミスティアの『焔閃衝』が無数に向かって、鳥人間へ襲う。

「チッ!!魔導師かい?!厄介だねぇ!!」

舌打ちしながらその深紅の閃光を掻い潜って、俺に突っ込んで来た。


「なぁんってな!!甘いねぇ!!甘すぎだねぇ!!!そんなチャチな魔法で捉えられないねぇ!!」


自信満々タップリな言い草。敵意丸出しで俺にマジックロッドの宝玉を俺に向け、一点に仕向けた無数の氷を形成した。


「くらいな!!万雹流激!!」


シュルルルルル・・・・ギュ・・・・ドヴァガアアアアアアア!!!


奴は氷を纏う、その周辺に水の奔流生まれる。その勢いは加速し俺に向かう、荒っぽい青銀の魔力の反乱が一気に狂った雹水の刃の様に迫った・・・・が。


「大気に・・・・眠りし魔力のつぶてよ・・・其のつぶてを並べ、大気を切り切り裂く、輝きを・・・繋げよっ!!」


ミスティアの十八番の魔法だ。


「雷っ撃っ・・・雷っ衝ぉおおおおおおおっ!!」


ギュルゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!!!!


炎の魔法を使わず敢えて雷の魔法を使ったのは、魔力誘導を狙った攻撃だ。マトモに浴びればただじゃすまない・・・・。


ズドオゴコオオオオン!!!


が・・雹水の竜巻の上から、見覚えある特大の鉄球が激突した。それは一気に地表の土を抉る、ミスティアは空へ回避し。そしてハルーラの守りにダルダが回って飛び散る破片を守った。


俺は彼女たちの目視し、再びその鉄球を目配せする。


シャリーゼ、ネイア姫はさっきまでその鉄球を防御していた・・・間違いなくその鉄球だ。


「・・・転移魔法・・・ゲロロック・・・ディーヴァ・・・お前らの仲間か!?」



怒気を含めて俺は何処へでもない何処かへと叫んだ。



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鉄球のチェーンにもトゲがあり、その持ち主が現れた。見慣れた空間の切り落としたかの様な、転移魔法特有の情景。


「・・・・イーグラス・・・無事か?」


ざっと鉄球に負けず劣らずの巨漢がそこにいた。禿げ頭に、口元は馬の様なマスク。ぶ厚い胸板を更に厚くしたような、重装甲な甲冑と陣羽織。隆々とした骨格と筋力で成り立った身体。ずっしりと踏ん張った馬のひづめの様な切先、ぱっと見はデーモンの様な風体ながら。

あからさまな巨人と言う風体だ。


「ぶっは!!・・・っくっそ!!やってくれたね・・・・なんだかよく分からないがアリガトネ、ゴーカス」

「荒っぽいが・・・アレを防ぐにはこれしか無かった・・・・」

「いいんだよ・・・アンタのやる事は機転が利いててさぁ・・嫌いじゃないさ・・・・」


鳥人間は、咄嗟に雹水の中から別の竜巻をまとって抜け出し回避、あの鉄球がバイパス・・要はアースの役目を果たしたのだ。


「電撃が・・・逸れた?」

「魔力誘導の応用みたいなものさ・・・見てくれに騙されるな!」


「って言うか厄介ぽい?」

「むむむ・・・コレが魔族とやらか・・・」

「・・・周りも警戒してください・・・蛙がいるかもしれません!!」


「カエル・・・鰐蛙だスね!」


驚くミスティアに対し、簡単に講釈し。俺の元へハルーラやネイアが集まって、警戒を高める。

魔族を初めてみるシャリーゼは驚いているし、ダルダはネイアの警告で周辺を警戒した。


「ひょっとして連中の目的は・・・この・・『黒妖石』ね・・・コレで何度目よ!!」

「・・・記憶していて、間違い無けりゃ三度目。」


ヴィラのウンザリした口調と一緒に、『黒妖石』を俺に渡す。受け取り、俺は踵を返し返答し受け止め収める・・・。

その刹那・・・俺は直感的な警報が鳴った。


「皆!!この場から飛べ!!」


叫んだ、俺とネイア姫でシャリーゼを抱きかかえ跳躍。ハルーラは持ち前の身の軽さで回避し先導する。ヴィラとミスティアの二人係りでダルダを抱えて、先導先の観客席まで一気にとんだ。


ゴォッ!!・・・・・ヴォオォオゴォオオオオオオオオオオオン!!!


と恐ろし衝撃が先ほどいた場所を消滅させる。


「アイツか!!」


発射した地点を目測で割り出す、そこに浮いていたのはフルプレートの騎士・・・ディーヴァだ。


「・・・その石を寄越して貰おう・・・」

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